研究課題
近年、歯周病原菌がアルツハイマー病の発症増悪に関与することが示唆されてきているが、そのメカニズムは未だに明らかとなっていない。アルツハイマー研究では脳内で記憶、学習機能に大きく関わっている海馬の障害に注目されているため、本研究では、歯周病原菌であるPorphyromonas gingivalis(P. gingivalis)由来内毒素Lipopolysaccharide(LPS)による、脳の海馬でのエピジェネティクス修飾について網羅的に観察することを目的とする。今年度は、サイトカインによる海馬への直接的な影響について、マウス海馬神経細胞を用いIL-10によるMME遺伝子発現変化について検討した。まずは血液中のIL-10濃度を測定するために、P. gingivalis由来LPSを投与1時間後のC57BL/6Jマウスおよび老化促進モデルマウス(Senescence-Accelerated Mouse Prone 8: SAMP8)の心臓から血液を採取し、IL-10濃度をELISA法で評価した。その結果、血中でのIL-10濃度はC57BL/6JマウスおよびSAMP8において、LPS非投与群と比べLPS投与群で上昇していることが確認された。次いで、マウス胎児由来凍結神経細胞を用い、1.0 μg/mL濃度のIL-10刺激によるMMEのmRNA発現変化を解析した。その結果、IL-10添加群では非添加群に比べて2倍程度のMME mRNA発現増加を認めた。これらのことから、アルツハイマー病発症に関与する遺伝子であるMMEの発現変化にはIL-10が関与しており、P. gingivalis由来LPSによる持続的かつ軽微な刺激が血清中のIL-10濃度低下およびamyloidβpeptide分解遺伝子MMEの減少につながり、アミロイド蓄積を引き起こすことによってアルツハイマー病の病態進行に関与している可能性が示唆された。
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