研究実績の概要 |
エクソソームは細胞が分泌するナノ粒子で、その中にはmRNAやmicroRNAが存在する。本研究は、このエクソソームに注目し、これまで炎症性サイトカインやLPSを中心に議論されてきた歯周病の病態を、全く新しい視点から解明することを目的とする。平成29年度は歯周組織を構成する細胞が、歯周病に罹患すると、細胞の内外でどのようなmicroRNAの発現変化が起こるかを調べるため、培養細胞で実験した。初代ヒト口腔上皮細胞をTNF-α存在下、または P. gingivalis由来のLPS存在下で72時間培養し、細胞内のTotal RNA を回収して、マイクロアレイ解析を行った。解析した2,588種類のmicroRNAのうち、TNF-αによって2倍以上発現が上昇したのは15種類、0.5倍以下に発現が減少したのは40種類であった。なかでも、miR-4730, miR-6716-3p, miR-451bは30倍以上発現が上昇し、miR-6819-5p, miR-6760-3p, miR-4252は0.05倍以下に発現が減少した。一方、LPSによって2倍以上発現が上昇したのは36種類、0.5倍以下に発現が減少したのは16種類であった。なかでも、miR-146a-5p, miR-8060, miR-582-5pは18倍以上発現が上昇し、miR-1238-5p, miR-335-3p, miR-3149は0.1倍以下に発現が減少した。 また、歯周組織を構成するいくつかの細胞からエクソソームを回収して、RNAを抽出後に、次世代シーケンサーにてsmall RNA-seq解析を行った。エクソソーム内には予想よりもはるかに多くのmRNA分解産物と考えられるRNAが多かった事で、解析に時間を要している。今後は、本解析を終了させて、歯槽骨吸収を促進するエクソソームについて検討する予定である。
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