研究実績の概要 |
IFN誘導性ケモカイン CXCL9, CXCL10, CXCL11は活性化T細胞、NK細胞の走化性作用、血管新生抑制作用を有するケモカインである。我々はヒト口腔扁平上皮癌ならびに白板症におけるCXCL9の発現、浸潤リンパ球について免疫組織化学的検討を行ない、腫瘍組織にCXCL9陽性所見を認め、またケモカイン受容体であるCXCR3 陽性細胞の浸潤も認めたことを報告した。しかし発現しているCXCL9や浸潤リンパ球が抗腫瘍的に働いているのかについては未だ解明されていない。本研究は口腔前癌病変から早期浸潤癌に至る過程におけるIFN誘導性ケモカインの役割を検討する一環としてマウス扁平上皮癌細胞株(SCCVII)に上記ケモカインを過剰発現させた安定発現細胞株を構築し、ヌードマウスへ移植し腫瘍形成に及ぼすこれらケモカインの役割について検討し以下の結果を得た。 1. IFN誘導性ケモカイン 安定発現細胞株をヌードマウスの背部皮下に接種し、経日的に腫瘍の増殖を観察した。その結果、Empty Vector 導入株と比較してケモカイン安定発現細胞株、 特にCXCL9及びCXCL11安定発現細胞株で顕著な腫瘍形成の抑制が認められた。 2. この腫瘍形成の抑制機構を検討する目的で腫瘍組織からTotal RNAを調整し、血 管内皮細胞マーカーであるCD31ならびにNK細胞のマーカーでPerforinの遺伝子発現をリアルタイムPCR を用いて検討した結果、CXCL11発現細胞株ではCD31の発現 の抑制傾向が認められ、またPerforinの発現は有意に上昇していた。 3.免疫組織化学的にも同様の結果を得た。 結果から、ヌードマウスはT細胞が欠損し ていることからCXCL11の発現により浸潤したNK細胞による細胞傷害作用、および血管内皮細胞の増殖抑制作用を介して腫瘍の増殖が抑制されたものと考えられた。
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