研究課題/領域番号 |
17K11686
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
津田 啓方 日本大学, 歯学部, 准教授 (60325470)
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研究分担者 |
三上 剛和 新潟大学, 医歯学系, 准教授 (80434075)
好士 亮介 日本大学, 歯学部, 助教 (80453877)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 短鎖脂肪酸 / 細胞死 / オートファジー / 活性酸素種 / DAMPs / 歯周炎 / 関節リウマチ / 三次元培養系 |
研究実績の概要 |
本研究は、①低栄養条件下での酪酸誘導細胞死誘導メカニズムを解明するとともに、②より生体に近いとされている初代培養細胞による上皮-結合組織三次元培養系を作成し、それを用いて酪酸誘導細胞死および関節リウマチ関連因子の放出について調べ、それらの研究結果から歯周炎誘導関節リウマチ予防法の開発を試みることが本研究の目的である。本年度は低栄養条件下における酪酸による細胞死誘導メカニズムの解明を中心に研究を行った。また、酪酸だけでなく、歯垢中の細菌が産生する他の短鎖脂肪酸が歯肉上皮細胞に及ぼす影響についても同様に調べた。P. gingivalisなどの歯垢中細菌の培養上清に含まれる短鎖脂肪酸のうち、酪酸、プロピオン酸、イソ酪酸、イソ吉草酸は濃度依存的に歯肉上皮Ca9-22細胞株の細胞死を誘導し、酢酸、ギ酸、乳酸、コハク酸は誘導しなかった。また、細胞死を誘導した短鎖脂肪酸は全てreactive oxygen species(ROSs)を産生していることが分かった。還元剤であるアスコルビン酸もしくはN-acetylcysteine (NAC)でROSを消去すると、細胞死とそれに伴う関節リウマチ誘導に関わる因子の放出が抑制された。これらのことから、短鎖脂肪酸誘導細胞死には活性酸素の誘導が関係していることがわかった。そこで活性酸素を感知および遺伝子転写調節に関与するKeap1-NRF2系の遺伝子発現を調べてみたところ、両者遺伝子発現はコントロールの20~50%の発現と抑えられており、短鎖脂肪酸誘導細胞死におけるKeap1-NRF2の関与は小さいと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題は初代培養細胞を用いた三次元培養モデルを使った研究および株化培養細胞を用いた細胞死および関節リウマチ関連因子の細胞外放出メカニズムの探索からなる。当初予定していた初代培養細胞の採取はやや予定より遅れている反面、短鎖脂肪酸誘導細胞死メカニズムの解明研究は、遺伝子発現解析等なども行い、予定より進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
①ROSスカベンジャーが短鎖脂肪酸誘導オートファジーへ及ぼす影響について調べる。 ②小胞体ストレスの可能性について調べ、細胞死との関連について調べる。 ③シトルリン化酵素活性上昇メカニズムを探るために、シトルリン化酵素遺伝子発現およびタンパク質産生を調べ、その上で、シトルリン化活性の上昇がどのように起こっているかを調べる。 ④細胞死に関連のある可能性が言われている遺伝子発現、およびタンパク質産生について調べる。 ⑤初代培養細胞が集まり次第、三次元培養系の構築実験に入る。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度予定していた初代培養細胞の採取・保存が当初予定より時間を要し、それを次年度に行うため。また、予定していた日本免疫学会等への発表を取りやめたために、次年度繰り越し額が生じた。さらに、細胞死メカニズムの探索研究の結果から、当初予定になかった様々な遺伝子の発現等を調べる必要性がでてきたために、本年度は次年度使用額と平成30年度助成金を合わせて、本研究を推進していこうと考えている。
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