研究課題/領域番号 |
17K11689
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研究機関 | 松本歯科大学 |
研究代表者 |
十川 紀夫 松本歯科大学, 歯学部, 教授 (30236153)
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研究分担者 |
今村 泰弘 松本歯科大学, 歯学部, 講師 (00339136)
十川 千春 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 講師 (10253022)
落合 隆永 松本歯科大学, 歯学部, 講師 (20410417)
宮崎 育子 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 助教 (40335633)
荒 敏昭 松本歯科大学, 歯学部, 講師 (90387423)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | メタロチオネイン / 舌癌 |
研究実績の概要 |
亜鉛の細胞内動態が癌の発症(発癌),増殖および転移に関与している可能性が示唆されているが,その詳細は未だ明らかではない。一方,メタロチオネイン(MT)は,生体内で亜鉛などの金属イオンと結合しており,生体亜鉛濃度の恒常性維持と調節に重要な金属結合タンパク質である。このため,MTは細胞内外の亜鉛濃度を制御することにより,発癌を始めとして,癌の増殖および転移に関与している可能性が想定される。MTには4種のアイソフォームが報告されており,その1つであるMT-4は,皮膚や舌および消化管など,扁平上皮にのみ発現するアイソフォームであり,その特異的な発現から直接的,間接的に舌癌の発症,増殖,転移に関与する可能性が考えられる。 本研究は細胞内亜鉛濃度の維持・調節に重要なMTの発現,特にMT-4を制御することによる舌癌の発症および増殖への影響を検討し,MT発現制御による舌癌治療への応用基盤を構築することを目的としており,その目的達成のため,平成29年度はMT-4の遺伝子発現系を構築し,MT-4遺伝子導入による細胞増殖への影響を検討するとともに,MT-4のプロモーター領域を解析して,MT-4の誘導因子を探索した。 非遺伝子導入癌細胞として扁平上皮由来のHeLa細胞を用い,リポフェクション法にてMT-4の遺伝子導入を図ったが,MT-4は細胞増殖には影響しなかった。しかし,コントロールに比べ,巨大化する細胞数が増加する傾向にあったことから,MT-4は細胞増殖ではなく,発癌過程での抑制に関与する可能性が示唆された。 さらに,MT-4プロモーター領域の解析から,MT-4がこれまで報告されていた亜鉛などの重金属以外に,グルココルチコイドによっても発現誘導することが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初予定していたMT-4の発現系を構築し,癌細胞に遺伝子導入後の細胞変化を観察したが,細胞数変化ではなく,形態変化であったため,その解析を急いだ。このため,正常ケラチノサイトを癌化させる形質転換に関する検討が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度の検討により,MT-4は癌細胞の増殖抑制ではなく,発癌過程を抑制している可能性が示唆されたため,正常ケラチノサイトを癌化させる条件検討を優先して実施する。これにより,正常ケラチノサイトを定常的に癌化させ,MT-4遺伝子導入による,癌化の抑制の検討を試みる。 さらに,two-hybrid法によりMT-4と相互作用する細胞内タンパク質を同定し,癌化抑制機序解明の一助とする。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度は正常ケラチノサイト細胞を癌化させる形質転換実験が遅れているため,その実験で使用するよう予定していた消耗品の購入を平成30年度に繰り越した。これにより,次年度使用額が生じた。平成29年度の検討結果から平成30年度は形質転換実験を優先実施する計画であり,平成29年度未購入の消耗品は平成30年度購入する予定である。
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