研究課題
亜鉛の細胞内動態が癌の発症(発癌),増殖および転移に関与している可能性が示唆されているが,その詳細は未だ明らかではない。本研究は,細胞内亜鉛濃度の維持・調節に重要な金属結合タンパク質メタロチオネイン(MT),中でも,扁平上皮組織に特異的なアイソフォームであるMT-4の発現を制御することによる舌癌の発症,および増殖への影響を検討し,MT発現制御による舌癌治療への応用基盤を構築することを目的としている。われわれは,MT-4による細胞内亜鉛シグナルの調節を想定した検討を実施しており,2019年度は2018年度に加え,3種のヒト舌癌由来細胞(HSC-2, HSC-3, HSC-4)を用いて,亜鉛感受性とMT-4遺伝子導入による細胞増殖性の変化について検討した。その結果,これら3種の舌癌細胞は亜鉛添加による細胞増殖抑制を受けず,さらに MT-4遺伝子を導入しても,細胞増殖への影響は認められなかった。一方,Two-Hybrid法を利用してMT-4と相互作用する細胞内タンパク質の同定を試みたが,偽陽性反応が検出され,予定した方法ではこれ以上の解析ができなかった。しかし,この結果から,MT-4はこれ自体,遺伝子転写因子として作用するか,転写因子の機能を制御している可能性が考えられた。昨年の結果と併せると,亜鉛感受性の違いにより,MT-4遺伝子導入の効果が異なることから,MT-4は亜鉛トランスポーターなど細胞内亜鉛シグナル調節に関わる因子の発現,あるいは機能に関与することが示唆された。
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