研究課題
昨年度の研究で、高脂肪食摂取により唾液中IgA分泌速度を増加させるフラクトオリゴ糖の効果が消失する可能性を明らかにした。今年度この実験のラット血清中IgG濃度を測定したところ、脂肪添加含量の違いの影響が認められた。高脂肪食摂取が全身的な免疫低下を起こし、唾液中IgA分泌速度に関与する可能性が示された。現在顎下腺チロシンヒドロキシラーゼ染色を行い、交感神経と唾液中IgA分泌速度の関係について、組織の面からも解析を行っている。昨年度の研究成果を受けて、今年度は糖尿病と運動が盲腸内容物IgAと顎下腺IgA濃度に与える影響を見るためのプレ実験を行った。糖尿病モデルラットOLETFとそのコントロールLETOを使用し、7週令から1週間予備飼育後に、LETO群、OLETF群、OLETF自発運動群の3群に分け、OLETF自発運動群は回転ケージで飼育した。16週後に顎下腺、血清、盲腸組織、盲腸内容物を採取し、顎下腺、盲腸内容物、血清IgA濃度をELISA法で測定した。顎下腺組織IgA濃度は群間の違いが認められた。LETO群に比較してOLETF群・OLETF自発運動群で低値が認められたが、OLETF群とOLETF自発運動群との間に差は認められなかった。血清中IgA濃度は群間の違いが認められ、顎下腺組織IgA濃度と血清中IgA濃度との間には正の相関が認められた。盲腸内容物中IgA濃度は群間の差が認められた。盲腸内容物中IgA濃度は、OLETF自発運動群でLETO群・OLETF群に比較して高値が認められたが、LETO群とOLETF群の間には差は認められなかった。顎下腺IgA濃度と盲腸内容物中IgA濃度との間には相関が認められなかった。糖尿病発症により顎下腺IgA濃度が低下する可能性が示された。また糖尿病を発症している場合は自発運動の有無では顎下腺組織IgA濃度に変化はみられない可能性が示された。
2: おおむね順調に進展している
交付申請書に記載した研究計画のうち、1.ラットに高脂肪食を摂取させ、盲腸内の代謝産物とIgAの増減、唾液中IgAの増減を解析、2.ラットに高脂肪食・難消化性糖類を同時摂取させ、盲腸内代謝産物と唾液中IgAの増減を解析、3.ラットに高脂肪食・難消化性糖類を摂取させ、それぞれが自律神経に与える影響を解析、まではほぼ終わっている。4.ラットに高脂肪食・難消化性糖類を摂取させ、顎下腺の形質細胞数とpIgR の増減を解析は、次年度中に行うことが可能である。5.ラットの血中に短鎖脂肪酸を投与し、唾液中IgAの増加と顎下腺形質細胞数とpIgR を解析、は今年度ラットの皮下に浸透圧ポンプを埋め込み、継続的にラット血中に短鎖脂肪酸を投与する実験を行ったが、うまくいかなかった。現在ラットに短鎖脂肪酸を添加した水を摂取させることで、ラットの血中短鎖脂肪酸濃度を上げて唾液中IgA分泌速度の変化を見る動物実験を進行中である。高脂肪食摂取による肥満が発症原因の一つとされる糖尿病が唾液腺に与える影響を確認するためのプレ実験も行うことができ、将来の実験につなげることができた。
現在交付申請書内「平成31年度の研究実施計画」に記載した、「5.ラットの血中に短鎖脂肪酸を投与し、唾液中IgAの増加と顎下腺形質細胞数とpIgR を解析」する動物実験が、ラットに短鎖脂肪酸を添加した水を摂取させる方法で進行中である。次年度はこの実験を終了させ、さらにラットに交感神経刺激薬を継続投与することによる唾液中IgA分泌速度の変化を見る予定である。これらのデータを次年度中に論文にまとめて投稿する予定にしている。
今年度はラットの血中に短鎖脂肪酸を投与する実験が失敗してしまい、その後の解析にかかる費用を使用しなかったため。この動物実験はラットに短鎖脂肪酸を添加した水を摂取させることで血中短鎖脂肪酸濃度を上げることに方法を変えて、進行中である。次年度はこの実験に関する解析で予算を使用する予定である。
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Acta Odontologica Scandinavica
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Journal of Oral Science