研究課題
昨年度、高脂肪食摂取により唾液中IgA分泌速度だけでなくラット血清中IgG濃度が低下すること、高脂肪食摂取が全身的な免疫低下を起こし、唾液中IgA分泌速度に関与する可能性が示された。今年度、ラット顎下腺チロシンヒドロキシラーゼ濃度を測定したところ、高脂肪食摂取で低下していることが判明した。チロシンヒドロキシラーゼはノルアドレナリンとアドレナリンの前駆体であるドーパミンの前駆体であり、高脂肪摂取により交感神経活性が低下し、唾液中IgA分泌速度が低下した可能性が示された。今年度ラットに短鎖脂肪酸を経口摂取させ、短鎖脂肪酸の経口摂取と摂取期間が唾液中IgA分泌速度に与える影響について検討した。唾液中IgA分泌速度には、短鎖脂肪酸摂取の有無と短鎖脂肪酸摂取期間の交互作用が認められ(p=0.0004)、短鎖脂肪酸摂取群の4週の方がコントロール群の4週と比較して高値が認められた(p<0.05)。短鎖脂肪酸を経口摂取することにより、摂取4週に唾液中IgA分泌速度が高くなる可能性が示された。難消化性糖類摂取では種々の要因が入るために明らかにできなかったが、短鎖脂肪酸の作用で唾液中IgA分泌速度が上昇することが明らかとなった。昨年度行った、糖尿病モデルラットを使用した実験では、糖尿病モデルラットOLETFではそのコントロールLETOと比較して、顎下腺IgA濃度が低値であることが判明した。今年度顎下腺pIgR発現量をリアルタイムPCRで測定したところ、糖尿病モデルラットOLETFではLETOと比較して顎下腺pIgR mRNA発現量が低値であることが判明した。糖尿病患者では唾液中IgAレベルが低値であることがヒトでは報告されているが、その要因は唾液腺におけるIgA濃度の低下と、IgAを唾液中に輸送するpIgR発現の低下である可能性が判明した。
3: やや遅れている
交付申請書に記載した研究計画のうち、1.ラットに高脂肪食を摂取させ、盲腸内の代謝産物とIgAの増減、唾液中IgAの増減を解析、2.ラットに高脂肪食・難消化性糖類を同時摂取させ、盲腸内代謝産物と唾液中IgAの増減を解析、3.ラットに高脂肪食・難消化性糖類を摂取させ、それぞれが自律神経に与える影響を解析、までは昨年度終わっている。4.ラットに高脂肪食・難消化性糖類を摂取させ、顎下腺の形質細胞数とpIgR の増減を解析は、今年度中にほぼ終えることができた。5.ラットの血中に短鎖脂肪酸を投与し、唾液中IgAの増加と顎下腺形質細胞数とpIgR を解析、は今年度ラットに短鎖脂肪酸を添加した水を摂取させることで、ラットの血中短鎖脂肪酸濃度を上げて唾液中IgA分泌速度の変化を見る動物実験を行い、現在解析中である。次年度中には解析を終了し、論文にまとめる予定である。
今年度は高脂肪食摂取ラットの顎下腺チロシンヒドロキシラーゼ低下を、免疫染色で明らかにする予定である。また、ラットに短鎖脂肪酸を経口摂取させることで、ラットの血中短鎖脂肪酸濃度を上げて唾液中IgA分泌速度の変化を見る動物実験の解析を終わらせる予定である。高脂肪食摂取が唾液中IgA分泌速度に与える影響を検討した実験結果と、糖尿病モデルラットの唾液中IgA分泌速度を検討した実験結果は、今年度中に論文としてまとめる予定である。
実験は計画通りに実施できたが、最終年度中に投稿し出版まで行う予定の論文作成が長引き、論文投稿は次年度4月になる予定である。論文の英文校正費用約10万円と、投稿予定の雑誌(Nutrients)への論文掲載料約20万円を次年度に繰り越す必要がある
すべて 2019
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件)
Journal of Oral Science
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
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