研究課題
近年、歯内療法における新たな根管洗浄法としてレーザー照射装置を応用したLAI(Laser-Activated Irrigation)という技術が考案され、洗浄能力の向上が期待されている。我々は本法に着目し、蒸気泡の挙動や根尖孔外の圧力、洗浄効果について超音波洗浄法(PUI)と比較して解析を重ねる過程で、レーザーチップに超音波振動を加えながら照射することにより、PUIとLAIの組み合わされた蒸気泡挙動が生じることを見いだした。さらにナノバブルは超音波により粉砕するとジェット流が発生し、細菌や細胞に微細な穴が空き、殺菌効果を示すという。そこでLAI、超音波、ナノバブル3種類の蒸気泡発生を同時に応用する新しい根管洗浄法の着想に至り、世界で最初にその開発と評価を行うことが、本研究の目的である。また根尖までNaOCl溶液を浸透させる洗浄法あるいは根尖孔外からのNaOCl溶液の溢出を防ぐ洗浄法として、根管内吸引洗浄法、超音波洗浄法(passive ultrasonic irrigation: PUI)などが開発された。また近年レーザー照射を応用した洗浄法(LAI)が考案され、臨床応用が試みられている。我々はこれらの点に着目して検討を重ねており、Er:YAGレーザーや半導体レーザーによるLAI、およびPUIとも、シリンジを用いた根管洗浄よりも根尖孔外に生じる圧力は低く、また根管内の根尖部削片の除去効率が有意に高いことなどの報告を行ってきたマイクロCTを用いた複雑な根管形態へLAIを行うことで、LAIはチップから約8mmまで影響を及ぼし、PUIと比較して有意に高い清掃効果を認めた。また出力やチップ径を大きくすることで、清掃効果は向上した。研究実績として2020度は4本の査読付き論文受理、3回の学会発表、2つの受賞、5本のその他論文を発表した。
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