研究課題
高周波/電磁波治療を深在性う蝕へ応用するにあたり、細菌に対する効果と生体に対する影響を解明する必要がある。高周波/電磁波はジュール熱を発生するため殺菌作用と共に組織為害作用があると考えられる。そこで、ヒト歯根膜細胞を用いて高周波/電磁波の細胞増殖に対する影響を調べた。その結果、非照射群と比較しても細胞増殖曲線に差違はなく、細胞に対する為害作用はほとんど無いことが明らかとなった。さらに、培養4日目では非照射群に比べ細胞数が反対に多くなることも明らかとなった。この事実は、高周波/電磁波は電極から少し離れたところでは生体の細胞、特に硬組織形成細胞の活性化を促進する可能性を示している。齲蝕原性細菌であるストレプトコッカスミュータンス(ミュータンス菌)への殺菌効果を細菌のサバイバル比で検討したところ、殺菌効果は電極の挿入深度により増し、通電回数に比例しその効果が増加した。このことは高周波/電磁波のう蝕における有用性を示している。なお、ミュータンス菌だけでなく他の細菌に対しても高周波/電磁波の殺菌効果が認められた。しかし、象牙細管内細菌殺菌および静菌効果についてはそれほどの作用は示さず、さらなる出力の増強および照射条件の探索が求められた。深在性齲蝕では菌体成分が象牙芽細胞に作用し炎症を引き起こすと考えられる。そこで、初期の炎症応答で重要な働きをする歯髄の自然免疫機構を解明する目的で、ラット象牙芽細胞様細胞を用いて検討した。その結果、自然免疫機構で重要な働きをするパターン認識受容体が象牙芽細胞に存在すること、そして、この受容体が菌体成分と結合することにより、ケモカイン産生を誘導することを明らかにした。さらに、プロポリスの成分であるCaffeic acid phenethyl esterがこの反応を抑制することも明らかにした。これらの知見は今後の歯髄保存治療の方向性を示している。
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BioMed Research International
巻: ID5390720 ページ: 12 pages
https://doi.org/10.1155/2019/539720
日本歯科保存雑誌
巻: 63 ページ: 1-7