歯質への接着性、象牙質の再石灰化促進作用、抗菌性などの機能性を有する覆髄剤と一体化して重合硬化する充填材料の開発を目的として、今年度は1.覆髄剤の抗菌性、2.長期水中浸漬後の象牙質への接着強さ、3.長期間疑似体液に浸漬した場合の象牙質石灰化促進作用について、昨年度から継続して詳細な検討を行った。1.については試作覆髄剤をタブレット状に硬化させ、PBS中に30分間あるいは2時間浸漬した環境下で培養したS.mutansの生菌数を評価した。生菌数はTSA寒天培地に播種して48時間培養したCFUを測定した。その結果、MTAとモノマーの配合比が6:4、7:3ともに、30分浸漬、2時間浸漬いずれの条件においてもコントロール群に対してCFUは有意に低い値であった。いずれの覆髄剤についても抗菌性を有することが示唆された。2.については水中浸漬12ヶ月後では、健全象牙質、脱灰象牙質ともに接着強さは低下しなかった。しかしながら、健全象牙質では6ヶ月後の接着強さは低下していたことから、さらに短かい間隔での接着強さの変化を検討する必要があると考えられた。3.については脱灰液に5日間浸漬した歯を用いて、象牙質のビッカース硬さを測定することで覆髄剤による再石灰化促進作用を検討した。疑似体液への浸漬時間の延長によって脱灰象牙質の硬さはさらに回復する傾向であった。覆髄剤から溶出するイオンによって再石灰化が促進されることが示唆された。
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