研究課題/領域番号 |
17K11714
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研究機関 | 明海大学 |
研究代表者 |
中村 裕子 明海大学, 歯学部, 講師 (50265360)
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研究分担者 |
森 一将 明海大学, 歯学部, 准教授 (80372902)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | エナメルマトリックスタンパク質 / bFGF / 血管誘導 / 歯髄再生 / 歯髄細胞 |
研究実績の概要 |
エナメルマトリックスタンパク質 (Emdgain®Gel (EMD))の生物学的活性作用を歯髄創傷治癒や歯髄再生治療に応用することを目的に検討し、歯髄-象牙質複合体への臨床活用を確立させることにある。 EMDの血管新生に対する効果および組織誘導効果を臨床的に検討した。 1)歯髄再生を想定した場合における、根尖部の内径の大きさが血管やそれに伴う組織の誘導に影響を与えるか、EMDを用いることによる効果の有無を検討した。 2)上記の結果から根尖部の大きさを企画したヒト抜去歯を用い、根管内にEMDを填入した試料をラット背部に静置した。4週間後に摘出し、根管内への組織誘導や根管壁面に接着する組織の様相を観察し、PLGと比較することによりEMDの効果を検討した。 3)ヒト歯髄細胞、歯根膜細胞および歯肉繊維芽細胞の細胞増殖、走化性、遊走性および石灰化形成能(ALP活性、アルザリン染色)に対するEMDの効果をbFGFと比較して検討した。 結果: EMDは、ヒト抜去歯の根管内への血管誘導能や組織誘導を亢進することが認められ、さらに根管壁面に対する細胞の接着性を高めている可能性があった。EMDを塗布した根管壁面では、象牙質に密着した様相で、血管を含んだ繊維性の組織が観察された。さらに、ヒト細胞を用いた基礎的な検討では、EMDは、bFGF同様に細胞遊走能や走化性を亢進することが認められた。一方で、石灰化物形成に関しては、bFGFよりも高い活性を認めた。1,2)の結果を平成29年日本歯科保存学会秋季大会にて報告し、3)については、30年日本歯内療法学会にて報告予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験計画として、以下の項目で研究予定を計画していた。 1. EMD の投与濃度、時間(期間)によるヒト歯髄細胞および歯髄幹細胞に対する細胞増殖能および毒性の有無を検索するため、ミトコンドリアの酵素活性を利用したMTT assay を行い、 相対的生細胞数を測定する。 また、Migration assay に関しては、Boyden chamber を用い、移動した細胞数を計測することで、EMD による細胞遊走への影響を検索する。さらにシャーレ内の細胞の走行性への影響も併せて検討を行った。これらの計画に対して、歯髄細胞のほか歯根膜細胞を比較対象としたが、概ね計画通りに実行することができた。 2. ヒト歯髄細胞の分化に対する影響は、培養細胞に対し、EMD を投与した培養細胞の分化度を石灰化形成の誘導活性に関して検討することとしていた。ALP assay アルザリンレッドを使用した色素沈着による石灰化誘導についての検討結果を行った。得られた結果をまとめ、学会発表の準備を行っている。 3.ヒト血管内皮細胞におよぼす血管形成促進効果の検討は、正常ヒト皮膚繊維芽細胞と臍帯静脈血管内皮細胞(HMVECs)(KURABO)を用い、管腔形成の検討を行っているが、形成の目視が確認できない場合、培養上清中の血管新生関連タンパク質をレベル測定し、比較することとしている。
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今後の研究の推進方策 |
EMDの細胞に対する効果を、歯髄細胞を中心に各種細胞(歯髄幹細胞を含む)を用いて検索する。主な項目は細胞毒性の有無と細胞増殖・象牙芽細胞への分化、シグナル伝達経路ならびに血管新生効果を評価する。29年度の研究に続き、以下の項目を検討する。 1.ヒト歯髄細胞の分化に関わるシグナル伝達経路に対する効果:ヒト歯髄細胞における増殖および分化に関わるシグナル伝達経路に関する効果は、IL-6 受容体、リン酸化とシグナル因子への活性化シグナル伝達経路の関与を評価する。 2.ヒト血管内皮細胞におよぼす血管形成促進効果のメカニズムの検討細胞の分離および培養条件は、29年度と同様に行う。また、ヒト皮膚線維芽細胞および臍帯静脈血管内皮細胞は、購入する。ヒト血管内皮細胞におよぼす血管形成促進効果の検討は、正常ヒト皮膚繊維芽細胞と臍帯静脈血管内皮細胞(HMVECs)(KURABO)を用い、専用培地上でEMDの管腔形成に対する影響を観察する。対象として VEGF(A)と Suramin 等の抑制試薬を用い比較することでメカニズムを検討する。さらに、LuminexR200 システムを用 いてヒト歯髄細胞の培養上清中の血管新生関連タンパク質をレベル測定する。 予定する動物実験は、Spraque-Dawley 系ラ ットを 用いた、抜髄歯内への組歯髄様組織の侵入や誘導とその機能について検討したいと考えている。29年度には、研究計画の一部であったラット背部に挿入したヒト抜去歯内への組織誘導の実験系は、概ね完了し、学会への報告も一部行っている。実際ラットの歯髄を使用した実験系には、手技の難易度が高いため、試行錯誤しているが、実験になんらかのトラブルが生じても修正・変更が可能と考 えている。
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