難治性根尖性歯周炎患者の根尖病巣組織60例と完全埋伏智歯を抜去した際に摘出した健常歯肉組織10例をコントロールとし、本研究に供試した。根尖病巣組織のヘマトキシリンーエオジン染色により、歯根肉芽腫と病理診断した組織を以下の研究に供した。 初めに供試試料からDNAを抽出し、real-time PCR法で解析を行ったところ、全ての歯根肉芽腫からEBVを検出したが、健常歯肉組織からは一切検出できなかった。また、LMP-およびZEBRA抗体を用いて二重免疫染色を行ったところ、歯根肉芽腫組織に浸潤したB細胞からこれらのタンパク発現を認めた。なお、健常歯肉組織からはこれらのタンパク発現を認めなかった。 供試試料から難治性根尖性歯周炎関連細菌8菌種の検出を行ったところ、歯根肉芽腫と健常歯肉組織から様々な頻度で検出された。なお、Enterococcus faecalisは健常歯肉からは検出されなかった。8菌種の酪酸産生能を検索した結果、Fusobacterium nucleatumが最も高い産生を示した。一方、E. faecalisとCandida albicansからは酪酸が産生されなかった。そこで、BZLF-1(EBVの再活性化マーカー)のルシフェラーゼアッセイを行ったところ、F. nucleatum最も有意に高いルシフェラーゼ活性を示した。従って、F. nucleatumがEBVの再活性化に最も影響していることが示唆された。 Daudi細胞(EBV感染B細胞)を用いてEBVの再活性化能を検索したところ、F. nucleatumが最も高いBZLF-1遺伝子およびZEBRAタンパクの発現を誘導した。 以上のことから、歯根肉芽腫にはEBVが感染しており、潜伏性を示しているが、F. nucleatumの関与により再活性化する可能性が示唆された。
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