研究課題/領域番号 |
17K11718
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
林 誠 日本大学, 歯学部, 准教授 (00301557)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 歯内治療用セメント / リン酸カルシウムセメント / 二相性 |
研究実績の概要 |
歯内療法領域の代表的なセメントであるMineral Trioxide Aggregate(MTA)は高い生体親和性,辺縁封鎖性および硬組織形成促進作用が認められ,国内外で広く使用されている。しかしながら硬化時間や操作性を改善する必要性などが指摘されており,価格自体も他のセメントと比較して高価な材料である。現在では後継材料の開発も行われているが,臨床的および基礎的な解析は未だ十分ではない。本研究の目的は,近年開発された単峰性粒度分布を示しながら均一な二相性の特徴を持つ新規Calcium Phosphate Cement(CPC)に着目し,MTA の問題点を改善するために本材料の歯内療法への有用性をin vitro およびin vivoで解析し,新しい歯内療法用セメントとして実用化の一助にすることである。 平成29年度は新規CPC を用いて,歯内療法用セメントとして重要な要件である辺縁封鎖性試験をヒト新鮮抜去歯(日本大学歯学部付属歯科病院倫理委員会許可番号:EP17D103)にてsplit chamber 法でヒト唾液を用いて行った。供試材料としては新規CPCセメントとし,対照材料として代表的な歯内療法用セメントであるMTA(ProRoot MTA, Dentsply)を使用した。 その結果,ヒト唾液を用いた場合,新規CPCは対照材料であるMTAと同等な辺縁封鎖性を示し,新たな歯内療法用セメントとしての有用性が示唆された。現在,難治性根尖性歯周炎の原因菌であるEnterococcus faecalisの懸濁液を使用し,より歯内療法に特異的なデーターを得るために研究を継続している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までの達成度としては,おおむね順調に進展していると考えられる。本研究の目的は,歯内療法領域で広く使用されているMTAの問題点を改善するため,単峰性粒度分布を示しながら均一な二相性の特徴を持つ新規Calcium Phosphate Cement(CPC)の歯内療法領域への応用である。そのため,ヒト唾液を用いた方法であったが,初年度において歯内療法用セメントとして重要な要件である辺縁封鎖性が代表的な歯内療法セメントであるMTAと同等に示されたことは,大きな意義があると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策としては,平成29年度内に行っていた研究の一部を継続する予定である。研究に使用するヒト新鮮抜去歯は,本研究に協力していただけることを了承した患者より供与を受けている。そのため,必要な本数の抜去歯入手には時間を要してしまい,研究期間が延長してしまう傾向にある。しかしながら,平成29年度ですでに実験モデルを確立できたため,研究遂行に問題はないと考える。 さらに本年度では,新規CPCを骨芽細胞などの硬組織形成細胞と共培養し,細胞に与える影響について分子生物学的手法にて解析し,臨床応用に向けた基礎的データーを取得する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)平成29年度では前述したとおり,辺縁封鎖性実験に使用するヒト新鮮抜去歯の入手には患者の協力が不可欠なため,実験数が制限され研究期間が延長してしまったと思われる。そのため,平成30年度にも辺縁封鎖性実験を継続して行うため,平成29年度からの繰越額を用いて継続する予定である。 (使用計画)特段の計画変更はないが,次年度の繰越額と平成30年度の研究費を使用して,辺縁封鎖性実験の継続と硬組織形成細胞に与える影響について実施する予定である。また,得られた研究成果に関しては,本研究費を使用して関連学会での発表や国際学術雑誌などへの投稿を行う。
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