研究課題/領域番号 |
17K11719
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研究機関 | 日本歯科大学東京短期大学 |
研究代表者 |
奈良 陽一郎 日本歯科大学東京短期大学, その他部局等, 教授(移行) (80172584)
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研究分担者 |
柵木 寿男 日本歯科大学, 生命歯学部, 准教授 (50256997)
前野 雅彦 日本歯科大学, 生命歯学部, 助教 (20736334)
河合 貴俊 日本歯科大学, 生命歯学部, 助教 (30793335)
新田 俊彦 日本歯科大学, 生命歯学部, 講師 (20247042)
山瀬 勝 日本歯科大学, 生命歯学部, 准教授 (80301571)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | メタルフリー歯冠修復 / CAD/CAM修復 / 接着修復 / 接着強さ / 口腔内環境ストレス / 接着性レジンセメント / 微小引張接着強さ / 即時象牙質シーリング |
研究実績の概要 |
平成29年度に得た代表的な研究成果の概要を以下に示す。 1. メタルフリー間接修復材料を介した透過光によって重合した接着性レジンセメントの硬化状態は、最近の2種LED照射器によって有意に異なった。また、各照射器によるセメント硬化状態への影響は、セメントによって異なった。さらに、照射器にかかわらず、歯科用CAD/CAMブロック4種を介した透過光によるセメント硬化厚さは、歯質とハイブリッドレジンを介した値より有意に大きな値を示した。 2. 汚染物質除去後のエナメル質微小亀裂に対するレジンインプレグネーション法は、グレー値に基づく審美的変化を生じないものの、低下抑制が期待できた。また、微小亀裂部へのNaClOの静置は審美性の向上に有効であった。 3. レジンセメンテーション用前処理材の接着有効性は、被着体となるメタルフリー修復材料および歯質によって有意に異なることが明らかとなった。 4. 即時象牙質シーリング(IDS)が大臼歯に対するCAD/CAMセラミッククラウン修復の適合性に及ぼす効果について、クラウン修復内のセメント厚さに基づき検討した結果、頬側の凹隅角部・軸側壁中央部・凸隅角部および近心の凹隅角部による4計測点において、IDS+群がIDS-群より有意に優れた適合性を示した。したがって、IDSは大臼歯に対するCAD/CAMセラミッククラウン修復の適合性を向上させることが明らかになった。 5. 支台歯形成面へのIDSおよび暫間被覆冠装着の有無がCAD/CAMセラミッククラウン修復の接着に及ぼす影響について、繰り返し荷重負荷後の微小引張接着強さに基づき検討した。その結果、CAD/CAMセラミッククラウン修復の接着はIDSによって向上し、暫間被覆冠装着による影響は受けていないことが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
患者および術者双方の願いや目標を具現化する首座的療法として、MI療法が活用できる従前のアナログ方法による直接・間接修復に加え、デジタルテクノロジーの進展を背景に、歯科用CAD/CAMシステムによるメタルフリー歯冠修復に大きな期待がもたれている。 本研究課題では、患者・術者双方が求めるデジタルおよびアナログ方法によるメタルフリー歯冠修復に焦点を絞り、質の高い当該修復の達成を図ることを目的に、口腔内環境を想定した実験を実施しながら、単に接着強さや辺縁漏洩による量的な検討のみならず、接着信頼性・耐久性 等の質的な検証を図ることによって、臨床への還元と寄与に努めることを目的としている。 この観点において、平成29年度は、1. 最近のLED照射器による修復物・歯質透過光によって重合した接着性レジンセメントの硬化状態について評価検討した。 2. 審美的問題に加え、齲蝕や歯の破折をもたらす危険性があるエナメル質微小亀裂への一対応法であるレジンインプレグネーション法による審美的変化について検証した。 3. レジンセメンテーション用前処理材の多種メタルフリー修復材料への接着有効性について、引張接着強さの観点から検討した。 4. 即時象牙質シーリング(IDS)が大臼歯に対するCAD/CAMセラミッククラウン修復の適合性に及ぼす効果について、クラウン修復内のセメント厚さに基づき検討した。 5. 支台歯形成面へのIDSおよび暫間被覆冠装着の有無がCAD/CAMセラミッククラウン修復の接着に及ぼす影響について、繰り返し荷重負荷後の微小引張接着強さに基づき検討した。 これらは、本研究課題の目的に呼応した方略であり、それぞれから得られた成果は、今後の歯科医療の一助となることから、進捗状況としてはおおむね順調に進展していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題は、残された2箇年の研究期間を有効に活用し、デジタルおよびアナログ方法によるメタルフリー歯冠修復に焦点を絞り、質の高い修復の達成を図ることを見据え、以下の取り組みによって成果を挙げたいと考える。 申請者らは本研究代表者が1987年に開発した口腔内環境想定の複合ストレスを試験試料に対し負荷できる試験機を保有している。この複合機能試験機は、近年目覚ましい進歩を遂げている歯科用CAD/CAMシステムを含めた多様な修復法や修復材料に対応でき、臨床的環境下における接着挙動の評価に際し、独創性・新規性に富む成果が期待できる。また、接着強さの測定に際しては、世界的認知を得ているMicro-tensile Bond Testの試験試料形態の検討を経た、信頼性に長けた引張接着強さ測定によって検討を行う。本法は、立体的構造を有する窩洞内で多様なストレスを受けた後の接着強さの挙動を精査するための斬新な手法であり、得られる結果は臨床的示唆に富む。さらに、申請者らが所有する小型接着試験器は、比較的小範囲に限局した臨床的修復歯面に対する歯科材料の接着強さをin vivoおよびin vitro両環境下において測定することができる。加えて、当講座では高額医療機器である歯科用チェアサイドCAD/CAMシステム:CEREC AC・MCXLを保有しており、次世代修復の担い手となりうるデジタルデンティストリーの客観的検証の集積を図る実験環境を整えている。 これら特色に富む手法や機器を複合的に組み合せて、研究分担者と緊密な成果・情報の共有化を図りながら、有意義な成果の集積を図ってゆく。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成30年3月21日~24日の期間、アメリカ合衆国フロリダ州フォートローダーデールにて開催されたAmerican Association for Dental REsearch(アメリカ歯科研究学会)において、本研究課題による研究成果:Effect of Immediate-dentin-sealing on bonding-behavior of CAD/CAM restoration under thermomechanical-cyclic-stressを発表した。 年度末であったことから、海外旅行保険費用や宿泊費用を含めた渡航費に余裕をもたせた結果、35,109円の次年度使用額(繰越金)が生じた。 この次年度使用額は、現在進行中の実験に必要な消耗品、すなわち複合ストレス負荷試験に必要な対合体作製用即時重合レジン、レジン接着システムの購入に使用する予定である。
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