研究実績の概要 |
本研究の目的は,病原性の異なるポリマイクロバイアル (PM) バイオフィルムに対するカキタンニンの効果を比較,分析することである.実験群は① 脱イオン水処理(cont),② 0.2% グルコン酸クロルヘキシジン群(C),③ 4.0 vol% Pancil PS-M 群(P),の3群とした.【結果及び考察】[実験1]: PおよびC群の処理直後における使用済培養液のpHは, バイオフィルムの病原性に関係なくcontに比較して有意に上昇し(唾液A:cont =4.4, C = 6.7, C = 6.8; 唾液B:cont = 4.2, C = 6.5, P = 6.8), その後48時間培養を継続すると, C群ではpHが下降するものの P群のpH下降は有意に抑制された(唾液A:cont = 4.2, C = 4.8, P = 6.0; 唾液B:cont= 4.1, C = 4.6, P = 5.9)(p<0.05). 72時間の時点でのLIVE/DEAD染色後のバイオフィルム中の全細菌細胞に対する死菌細胞の割合は,cont群: 3.1 %,C群: 60.5 %,P群: 75.8 %であり,P群はC群より有意に高い死菌数の割合を示した. [実験2]:唾液AおよびB両群において,PとContのバイオフィルム群集構造間には差が認められなかったが,Cと他群間には明瞭な差が認められた.またPとContの構成菌はStreptococcus salivariusが主体であったが,C群では,Haemophilus parainfluenzaeやStreptococcus anginosusの割合が増加していたことから,カキタンニン処理は耐性菌などを増やさず,健全な細菌叢のままプラーク形成を抑制できることが示唆された.
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