研究課題/領域番号 |
17K11733
|
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
平田 恵理 北海道大学, 歯学研究院, 助教 (10722019)
|
研究分担者 |
横山 敦郎 北海道大学, 歯学研究院, 教授 (20210627)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | カーボンナノ物質 / カーボンナノホーン / カーボンナノチューブ / 骨 / 骨再生 / 生体材料 / 生体適合性 |
研究実績の概要 |
我々はこれまでにカーボンナノ物質(CNMs)を骨再生へと応用する研究を行ってきた.その中で,カーボンナノホーン(CNHs)を貪食したマクロファージが骨芽細胞の分化を促進し,骨形成に関与することを報告した.これらの研究成果を基に,マクロファージを介した骨形成を利用しオッセオインテグレーションを早期に獲得するため,CNMsによる表面処理を施したデンタルインプラントを開発することが本研究の目的である. 1. CNH膜上でのマクロファージの挙動と骨芽細胞の分化への影響評価:CNHsをPTFE膜に固着したCNH膜上で,骨芽細胞とマクロファージを培養した.PTFE膜上と比較して,両細胞とも伸展し,骨芽細胞のALP活性は高いことが明らかになった. 2. CNHs担持インプラントの創製:泳動電着によりCNHを陽極酸化チタン(Ti)に均一に付着させることが可能となった.このCNH/Ti上で骨芽細胞を培養したところ,7日後にTi上と比較してより多くの細胞が付着していることが明らかになった.また,CNH/Tiをラット骨髄腔に埋入したところ,7日後にはTiと比較して新生骨の付着率が高いことが明らかになった.TEM観察したところ,新生骨付近にCNHsが観察された. 3. CNMsの体内動態の検索:生体透過性が高く生体イメージングに適した近赤外(NIR)光の波長域である1000-1300nmにおいて蛍光を発する単層カーボンナノチューブ(SWNT)を頭蓋部皮下に埋入し,体内動態を観察した.SWNTも埋入部で蛍光が観察され,24時間後には蛍光強度の減少が見られた.肝臓をはじめとする他の臓器では蛍光が観察されず,肝臓組織切片においても蛍光はみられなかった.56日後,埋入部の蛍光はさらに減弱したが,蛍光は鮮明にみられた.局所埋入したSWNTは,他の臓器にほとんど移行せず,埋入部位に留まることが示唆された.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
カーボンナノ物質(CNMs)のひとつであるカーボンナノホーンCNHsと,マクロファージおよび骨芽細胞の影響を評価した.この結果を用いて,オッセオインテグレーションを促進するインプラントの表面処理へと展開が可能である.また,泳動電着によってCNHsをチタン表面に均一に付着させることが可能となった.本法を利用してグラフェン,カーボンナノチューブ(CNTs)などのCNMsをチタン表面に修飾し,骨形成に効果的なデンタルインプラントの開発を行う.また,近赤外光で蛍光を発するCNTsとコラーゲンゲルを混和し,ラット頭蓋冠に埋入し,経時的に体内動態を観察することが可能となった.
|
今後の研究の推進方策 |
今後は骨芽細胞とマクロファージを共培養し,カーボンナノホーン(CNH)膜上のマクロファージが骨芽細胞に与える影響を評価する予定である.また,泳動電着法を用いて,グラフェン,カーボンナノチューブ(CNTs)などのカーボンナノ物質(CNMs)をチタン表面に修飾し,骨形成により効果的なCNMsの化学的および物理的特性について検討する.CNMsの体内動態については,デンタルインプラントの表面処理として応用した場合を想定し,CNTsをラット下顎骨に埋入し,近赤外光によって観察を行う.
|
次年度使用額が生じた理由 |
実験に使用を予定していた細胞と培地の入荷が遅れたため次年度に購入することとなった.また,当初は数種類のカーボンナノ物質を用いて予備実験を行う予定であったが,カーボンナノホーンを用いた実験が当初予定していたよりも進展したため,新たなる知見を得るため計画を変更してチタンの表面修飾を先に行い,分析前のサンプル作製に時間を要したため.
|