本研究の目的はマクロファージを介した骨形成を利用しオッセオインテグレーションを早期に獲得するため、カーボンナノ物質 (CNMs)による表面処理を施したデンタルインプラントを開発することである。本年度は、チタン表面にカルボキシル基を付与したカーボンナノホーン (CNHs) を修飾したCNH/Ti上でマクロファージを培養し、遺伝子発現を解析するとともに炎症性サイトカインの産生について検索した。 マイクロアレイによるGene Ontology解析においては、Tiと比較してCNH/TiにおけるマクロファージのDNAの転写、修復ならびに複製に関する遺伝子がdown regulateされていた。培養3日後のサイトカイン発現量については、CNH/TiのTNFαとIL-6はTiと比較して有意に低く、IL-10は両者の間に有意差を認めなかった。TNFαとIL-6は、M1型マクロファージが分泌する炎症性サイトカインであり、骨形成の阻害因子であることが報告されている。一方、IL-10はM2マクロファージによる抗炎症性サイトカインとして知られている。以上のことから、Ti表面のCNHsは、DNAの転写、修復ならびに複製を制御し、炎症反応に影響を与えることが示唆された。CNH/Ti上のマクロファージをTEMにて観察したところ、細胞質内にCNHsが観察された。これらの結果より、Ti上のCNHsがマクロファージの分化に何らかの影響を与えていることが示唆された。この結果を用いて、現在は、CNH/Ti上のマクロファージの分化について、さらに詳細に検索中である。
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