研究課題/領域番号 |
17K11740
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
古屋 純一 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 教授 (10419715)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 嚥下 / 義歯 / 高齢者 / リハビリテーション / 口腔ケア |
研究実績の概要 |
平成30年度においては、前年度における単施設の調査をもとに、多施設研究を実施し、特に急性期および維持期の施設において、食事の問題が主訴にありかつ歯科の関わりがあった入院患者および在宅・施設療養患者を対象として、診療・カンファレンス記録をもとにした複数の施設における横断調査を行い、中間解析を行った。その結果、以下のことが明らかとなった。 急性期39名および生活期28名で、多くが65歳以上の高齢者であったが、生活期において有意に平均年齢が高かった。男性と女性の割合は、どちらの期でも約半数ずつであった。急性期では診療依頼元はすべて主治医であったのに対して、生活期ではケアマネが最も多かった。原疾患はどちらも脳卒中、神経筋疾患、認知症が多く、生活期では廃用症候群も認めた。依頼内容(複数回答)は、急性期では歯科による専門的口腔ケアが最も多いのに対して、生活期では義歯が最も多く、次が摂食嚥下リハビリテーションであった。意識レベルは急性期では中央値JCS3であり、生活期ではJCS1であった。食事の状況は、急性期では中央値がFOIS1と経管栄養であり、生活期では中央値FOIS6と軟菜食レベルであり、大きな差を認めた。嚥下の状況は、急性期では中央値がDSS2と食物誤嚥レベルであったのに対して、生活期はDSS5と口腔問題レベルであり、有意な差を認めた。必要な歯科的対応は多岐にわたっていたが、急性期では専門的口腔ケアが最も多く、生活期ではそれに加えて義歯関連処置、続いて嚥下関連処置が多く占めた。また、そのうち優先すべき対応としては、急性期では口腔ケア、生活期では義歯であった。 これらの結果から、急性期と生活期では必要となる歯科ニーズが異なることが示唆され、食支援を目的とした高齢者の口腔機能管理を行う上では、ライフステージにあわせた歯科的対応の検討が必要になると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30年度は、本学だけでなく全国の複数の施設を対象に研究を行っているが、今年度は特に施設数が多い急性期と生活期の高齢者を対象に調査を行った。多施設に対する聞き取りによると、急性期および生活期については順調に症例が集積されてきていると考えられる。一方で回復期での調査については、研究協力が円滑に得られていない施設もあったため、今年度の中間解析からは除外することとした。 研究報告については、症例報告・症例集積レベルではあるが、義歯と嚥下の関係を基盤とした症例発表を関連学会や招待講演で進めており、これらの発表によって国内外の研究者への本研究の結果の周知を進めることができていると考えられる。また、中間解析では、単変量解析ではあるが、急性期と生活期における有意な差を認めている。 これらのことから、現在までの進捗状況はおおむね順調に進んでいると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成31年度については、国内の多施設における調査を継続して実施し、急性期と生活期に加えて、回復期の施設において、食支援に関連する歯科の関わりがあった入院・在宅療養患者を対象として、診療・カンファレンス記録の中から、歯科的なニーズについて調査する。研究協力施設に対しては症例集積に対する声かけを積極的に行い、症例集積が思わしくない施設に対しては早期から直接訪問し打合せすることで課題を解決し、研究への積極的協力を促す。 また、平成31年度においては、これまでの調査結果を最終的にまとめ、補綴歯科による義歯への介入を含めた口腔機能管理が、急性期・回復期 ・維持期のそれぞれにおける食事支援との関係を明らかにする。特に、口腔ケア、摂食嚥下リハビリテーション、有床義歯に焦点を当てながら、急性期・回復期・生活期それぞれのステージにおける高齢者の歯科的対応のニーズを明確にしうる基礎的なデータを収集・解析する。さらにその上で、口腔機能管理の特徴と限界を明らかにすることで、高齢者の食支援を目的とした有床義歯への補綴歯科的介入の在り方、および食支援のための効率的な口腔機能管理の在り方を模索する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成30年度には、全国の13の研究協力施設における研究打ち合わせを複数回行う予定であったが、学会参加をかねて研究打ち合わせを行うことで、旅費を削減することができたため、次年度使用額が生じた。 平成31年度においては、全国12施設での研究打ち合わせの旅費と研究に用いる消耗品にかかる物品費、また研究論文の投稿費にかかる経費として使用する予定である。
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