研究課題
歯冠色をもつ歯科材料の中にヒトの歯質に近い性質をもつものは存在しない。本研究では、生体のもつ優れた機能や構造を模倣しようとするバイオミメティクスのコンセプトに基づいて、ヒトの歯質に機械的性質が近似したいわば人工エナメル質と人工象牙質を開発する。そして、新材料と残存歯質とを接着させることによって一体化をはかり、天然歯に近似した構造をもつ世界初のバイオミメティックな歯冠修復システムを構築しようとするものである。本研究により現行のシステムがバイオミメティックでないことに起因していた冠脱離、破損といった臨床的諸問題が解決する可能性が高い。さらにこの新システムで歯根破折の防止も期待できる。この目標を達成するため、初年度は新しい複合材料の開発に取り組んだ。独自の有機-無機複合化技術を用いることにより、シリカとポリメチルメタクリレート(PMMA)からなるSiO2-PMMAコンポジットを試作し、エナメル質と同等の硬さをもつ新素材を開発した。2年目は、新規SiO2-PMMAコンポジットの接着特性について調べた。その結果、シラン処理を行ったレジンセメントに対して大きな接着強さを示すことがわかった。本年度は、SiO2-PMMAコンポジットの高強度化を目指し、作製条件の改良を行った。焼成条件、後熱処理、重合温度、シランカップリング剤の濃度などの条件を検討したところ、前駆体である多孔質シリカを真空雰囲気で後熱処理した後に、5%濃度のシランカップリング剤を作用させると高い曲げ強さをもつSiO2-PMMAコンポジットが得られることが明らかとなった。
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