研究課題/領域番号 |
17K11769
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研究機関 | 愛知学院大学 |
研究代表者 |
宮前 真 愛知学院大学, 歯学部, 准教授 (10340150)
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研究分担者 |
加藤 大輔 愛知学院大学, 歯学部, 講師 (00367616)
尾澤 昌悟 愛知学院大学, 歯学部, 教授 (50323720)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 顎義歯 / 口腔インプラント / 咀嚼能力 |
研究実績の概要 |
目的:平成24年の保険制度改正により一部の症例および施設においてインプラント治療が健保適応となった.今回,健保適応となった広範囲顎骨支持型補綴として,顎骨欠損に対してインプラント支台のオーバーデンチャーを装着した症例を経験し,各種機能評価から顎義歯に対するインプラント支台の有用性を検討した. 材料と方法:患者は71歳,男性.咀嚼障害を主訴として他施設からの紹介により,平成24年5月に当院口腔外科に来科した.下顎骨両側の歯肉癌および舌癌により,両側の下顎骨切除術,舌部分切除術,頸部郭清術が施行されていた.残存歯は右側下顎犬歯のみであり,術後の機能回復のために,広範囲顎骨支持型補綴を提案したところ患者の同意が得られたため,各種検査を行った後にインプラント治療に着手した.平成25年10月に下顎前歯から小臼歯部にかけて,4本のインプラント埋入手術を施行した.その後,通法に従い全部床義歯型のインプラントオーバーデンチャーを作製し,平成26年11月に装着した.保険適用のインプラント材料には制約があり,限られた材料を使用しての対応であったが,自費治療に比較して患者の費用負担も少なく,装着したインプラントオーバーデンチャーは強固な維持を獲得し,患者の満足が得られた. 結果:現在3年以上の経過を観察し,各種機能評価からも良好な結果が確認された. 結論:この種の症例に対して,広範囲顎骨支持型補綴は,患者負担も少なく良好な機能回復が得られるものと思われる.また,長期的な経過観察や多くの症例を経験することにより,この種の治療に関してさらなる有用性や適応の拡大を検討することが今後の課題であると思われる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
腫瘍や外傷などを起因として,広範囲な顎骨欠損を余儀なくされた場合,その後の患者のQOL 向上には顎義歯を装着することになるが,顎骨欠損となった場合,顎義歯の安定要素である支持・把持・維持を求めることが極めて困難となり,口腔機能が思うように改善できない場合も多々認められる.一方,現在歯科インプラント治療は臨床現場で数多く使用され,コンベンショナルな補綴装置における支台装置と比較し,そのメリットが基礎的かつ臨床的にも確認されている.しかし,顎義歯におけるインプラント治療の有効性を明らかにした報告は少ないことから,今回,それらを確認するために本研究を進行しているが,おおむね順調に進展していると考えている.ただし,インプラントを応用した顎義歯症例数が当初の計画に比較し,集積されないことや,咬合力測定のシステムが,本年より新しくなることが明らかとなっていることから,そのシステムでの実施を念頭に置いているため,当初の計画以上の進展とは言えないのが現状である.
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今後の研究の推進方策 |
研究計画にもあるように①顎義歯症例における咀嚼能力検査,②インプラント症例における咀嚼能力評価,③インプラント支持顎顔面補綴装置症例の咀嚼能力評価の継続を予定している. さらには,研究計画にあるように研究代表者は,一般社団法人日本顎顔面補綴学会のガイドライン作成委員会に属しており,現在,本課題内容と同様の新規のガイドラインおよびレビュー,ポジションペーパーを作成予定であるため,文献調査から得られた情報を公表することが可能であると思われる.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画に比較し,物品費の部分で交付額より実支出が少なかったことが次年度使用額が生じた一番の要因と思われる. また,本年も引き続き咀嚼能力評価の継続を予定しているが,そのデータ採取に不可欠となる咬合力測定用感圧シートであるデンタルプレスケール(ジーシー社)が本年度新しいシステムに変更となった.また,その解析システムには,ソフトおよびスキャナーが必要となることがわかっているため,これらを新たに購入計画に入れ込む必要があり,これの購入および申請時に提示した消耗品,あるいはこれからの研究に必要となる物品の購入に際して,次年度使用額と本年度の予算支給分を合わせて適切に使用する予定である.
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