研究実績の概要 |
目的:腫瘍や外傷などを起因として,広範囲な顎骨欠損を余儀なくされた場合,その後の患者のQOL 向上には歯科補綴学的な処置が必須となるケースが大多数を占める.口腔機能や整容面を改善するためには顎義歯を装着することになるが,顎骨欠損となった場合,顎義歯の安定要素である支持・把持・維持を求めることが極めて困難となり,口腔機能が思うように改善できない場合も多々認められる.一方,現在歯科インプラント治療は臨床現場で数多く使用され,コンベンショナルな補綴装置における支台装置と比較し,そのメリットが基礎的かつ臨床的にも確認されている.さらに,平成24年の保険制度改正により一部の症例および施設においてインプラント治療が健保適応となった.しかし,顎義歯におけるインプラント治療の有効性を明らかにした報告は少なく,今後増加することが予想されるこの種の治療法における咀嚼機能回復を複合的に確認することを目的とした. 方法:インプラント顎義歯装着者の咀嚼能力を摂食可能食品アンケート,咬合力測定,グミゼリーを用いた咀嚼能力検査により評価した.また,顎顔面補綴診療ガイドライン2009年版に追加して文献検索を行うこととし,日本顎顔面補綴歯科学会診療ガイドライン作成委員会において作成したキーワードを日本医学図書館協会に提示し,検索式を用いてPubMedおよび医中誌Webから再度文献調査を行って吟味した. 結果および結論:この種の症例に対インプラントを支台とした顎義歯は,良好な機能回復が得られることが確認された.また,文献検索から新たなガイドラインを完成した.その結果においても顎骨欠損患者へのインプラント顎義歯は,従来の顎義歯に比べ維持安定に優れ,咬合や咀嚼機能の回復に有用であることが示唆された.
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