研究課題/領域番号 |
17K11773
|
研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
上野 俊明 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 准教授 (30292981)
|
研究分担者 |
和田 敬広 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 助教 (10632317)
中禮 宏 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 助教 (50431945)
林 海里 東京医科歯科大学, 歯学部附属病院, 医員 (30803192)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | マウスガード / ウェアラブルセンサ / フォースセンサ |
研究実績の概要 |
[緒言]運動時の咬合状態の確認は,筋電図活動の変化に関する報告はあるが,歯列にかかる咬合圧や衝撃圧を測定した報告はない.その測定にはセンサ内蔵MG型ウェアラブルセンサが有用と考えられるが,開発に至っていない.そこで,フォースセンサ内臓MG型デバイスを試作し,センサ上下面のMG材の厚みを変化させ、MG材の厚みの変化がセンサ出力の挙動への影響を調べた. [材料および方法]フォースセンサはPS-10KC(PS:共和電業)とFlexi Force(FF:ニッタ)を,試験MG材はエチレン酢酸ビニル共重合体を主成分とするERKOFLEX(ERKODENT)を使用した.試験は、試験1)センサ2種(PS, FF)に関してセンサ下面のMG材(直径30 mm)の厚さは2 mm,センサ上面(直径30 mm)のMG材は厚さを1, 2, 3 mmとし,3種類の試験片を作製、試験2)センサ1種(FF)に関して、センサ上面と下面のMG材は厚さをそれぞれ1, 2, 3 mmとし、計9種類の試験片を作製し、試験機EZ-LX(SHIMADZU)を用いて,試験片に荷重を加えた. [結果]試験1)いずれのセンサにおいても,センサ上面のMG材の厚さに関わらず,荷重とセンサ出力には正の相関関係が認められた.一定荷重におけるセンサ出力は,センサ上面のMG材の厚さとセンサ出力に概ね負の相関関係がみられ,厚さが増すとセンサ出力は低かった.試験2)センサ上下面のMG材の厚さに関わらず、荷重とセンサ出力には正の相関関係が認められた.約40 N以上では、荷重とセンサ出力の差が大きくなったが、その差は厚みが薄いほど大きくなった.センサ上下面それぞれMG材の厚さ変化で圧力センサの出力が変化することが分かった. MG型ウェアラブルセンサ開発にあたり、センサ上下面それぞれのMG材の厚みに応じた固有の補正が必要であることが明らかとなった.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の、今年度の予定では、ラミネート加工した薄膜圧力センサの挙動データ確認を目的とし、マウスガード型センサデバイスでは咬合圧センサを熱可塑性弾性樹脂のマウスガードシート材でサンドイッチ加工する方針とし、センサの埋入位置や深度によって咬合圧が変動するので,校正を行っておく必要があると考えていた.センサ応答はマウスガード材の厚みに依存すると予想されたので,センサ上面の厚さを変化させる設定のみを考えていた.咬合圧が直接加わらない下面の影響は無視できると考えていたが、下面の影響も検討する必要があることがわかった. 圧力センサにユニバーサルデータレコーダを組み込んで準備し、改変型マルチ試験機(EZ-LX)にて仮想咬合圧として規定圧の負荷試験を実施することを計画していた.厚みの異なるセンサ校正用モデルで計測して,厚さ依存性を確認しながら,データ校正作業を行うこととしていたが、当初予定以上の設定において確認することができた. 圧力センサと加速度センサを本来の防護機能を損なうことなく,口腔機能も障害せず,快適性も担保される位置にフォースセンサを埋設し、耐久性や破損事故等にも配慮した形でマウスガード型センサデバイスの試作した.当初計画通り、フォースセンサを左右第一大臼歯咬合面部に埋設する方向で試作できた. 概ね今年度に計画していた以上の進捗があったが、1)「MG型ウェアラブルセンサ開発にあたり、センサ上下面それぞれのMG材の厚みに応じた固有の補正が必要であることが明らかとなった」となったのは計画以上であったが、2)咬合圧付加試験機・EZ-LX用装置の作製・校正などには至らなかったので、全体としては「おおむね順調」と考える.
|
今後の研究の推進方策 |
フォースセンサを左右第一大臼歯部に埋設させたMG型ウェラブルセンサにて、口腔内での実装テストに向けたセンサデバイスの挙動試験を開始する.それにあたり、市販の咬合力測定システム(デンタルプレスケールII、分析ソフト:バイトフォース アナライザ)との相関関係も検討し、マルチ試験機EZ-LX(SHIMADZU)に使用可能な咬合圧負荷試験機構(SHIMADZU予定)を作製・校正することで、実装に向けた校正作業を進める. 当初予定では、次年度から「頭部ダミー実験による加速度センサ補正作業と回転加速度アルゴリズムの決定」を行う予定であった。「咬合器付き頭部ダミーをセットアップして衝撃試験を行い,デバイス内臓加速度センサの補正作業、前額部とデバイス内臓の両センサから得られる加速度データの差異を求め,加速度センサの校正作業を行う」、「頭部全体重心とのズレによる重心補正も行う必要があり、相関解析にて最適補正係数を導く」などの試験や検討が必要と考えていた.脳震盪では回転加速度が重要な役割を演じているので,この段階で様々な角度で衝撃力を負荷し,本デバイス使用時の回転加速度に対するアルゴリズムの必要性を検討する予定であった.しかしながら、加速度センサの口腔内実装は、マウスガードの持つ防護機能を損なうものであったため、いったん次年度は行わないこととする。フォースセンサのセンシング情報を無線化する小型無線多機能システム(TSND151:ATR-Promotions)、加速度・角速度センサ、地磁気センサ、ADコンバータが内蔵されているため、加速度センサの挙動は「MG型ウェラブルセンサ実装」時(30年度予定)に、検討することとする。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初今年度中に作製購入・校正予定であったマルチ試験機EZ-LX(SHIMADZU)に使用可能な咬合圧負荷試験機構(SHIMADZU予定)を、次年度に持ち越すこととしたため、次年度使用額が生じた。規格外特注・受託作製品のため、購入が遅れているが、購入のための基礎的試験は計画以上に進んでいるため、次年度の購入資金として使用予定である。
|