研究課題/領域番号 |
17K11774
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
中禮 宏 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 助教 (50431945)
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研究分担者 |
上野 俊明 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 准教授 (30292981)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | マウスガード / 高機能化 / ガラス繊維強化 / 緩衝空間 |
研究実績の概要 |
ガラス繊維による材質強化によるマウスガード(MG)の高機能化に関して、対衝撃面を補強し緩衝空間を設けることの有用性とその臨床応用を検討している。 昨年度までにMGへのガラス繊維強化材料応用における加衝物と緩衝空間の広さの関係について実験的検討を行った。MGの高機能化において、ガラス繊維強化型MG材料の使用と緩衝空間の設定により、衝撃条件に関わらず、衝撃伝播が効果的に緩やかなものとなることが示唆された。また、衝撃強さによりその効果特性が異なり、臨床応用にあたっては想定される衝撃に応じた緩衝空間の広さ設定を検討することが必要と考えられた。そこで、4種試作MGの衝撃応答様相を高速度カメラで撮影し,加衝物の違いによる変化特性をデジタル3Dシステムソフトウェア(VIC-3D,レーザー計測)で解析・評価する実験系を構築した.ガラス繊維と緩衝空間の組合せによってMGの衝撃応答様相が変化し,加衝物が変わるとその効果特性も変化することが推察された. そこで本年は、昨年撮影を行った映像をもとに衝撃時のMG衝撃応答様相に関して変位量の時間的解析とその周波数解析を進めることとした。これにより、ガラス繊維と緩衝空間の組合せによってMGの衝撃応答様相が変化し,加衝物が変わるとその効果特性も変化することが明らかとなった.加衝物が鉄球の場合の加衝撃方向変位量分析から、ガラス繊維強化と緩衝空間の設定した場合、側切歯への影響を軽減するような応答を示したのに対し、ガラス繊維強化のみで緩衝空間なしとした場合、側切歯にも衝撃を分散させて緩和させるような応答を示した。一方、加衝物が硬球の場合、ガラス繊維強化の影響は応答様相としては緩衝空間の設定には影響されず、変位量分析では変位量の減弱および遅延がみられ、周波数分析から低周波シフトがみられた.想定される衝撃に見合った設計デザインを付与することが重要と考えられた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
一昨年までに、実験的条件でガラス繊維強化型材料の下面に衝撃を伝搬しないようにするためのスペースを開けることが効果的であることが示唆されていた。そこで、競技特性・スポーツ用具に応じたスペースの開け方が不明なため、段階的なスペースを開けた試料片を作製し、研究は進めることができていた。 一方、昨年度は高速度カメラシステムシステムを用いて加撃後の加衝物反発高さから,材料の反発様相や変形様相あるいは衝撃伝搬様相の検証を行う予定であった。しかし、予備試験の結果と予算計画の問題から一部計画を変更し、実際のマウスガードの形態を模した複数の条件の試作MGを予定通り高速度カメラ分析のための撮影のみが行われた。 そのため、分析方法の変更や周波数応答特性分析の煩雑さもあり、研究成果の発表までは到達しなかったため、研究期間を延長して推敲することとした。
以上を勘案し、全体としては「遅れている」と考える.
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今後の研究の推進方策 |
当初予定から、様々なスポーツ用具などに対する衝撃吸収分散応答の違いを検討するために、スポーツ用具ごとにⅰ:ガラス繊維強化材料の厚さ,ⅱ:被覆面積,ⅲ:緩衝空間量を変化させて、検討を継続することの重要性が実際のMGの形態を模した試作MGの今年度の結果から改めて確認された。今後も、試験片を用いた基礎衝撃試験を継続していく必要があると考える。加撃物の形態や硬さなどによって差異があることが知られている。複数の加撃物にて比較することで、それを使用するスポーツ各々における至適の高機能化の方向性を示せ、さらに比較検証もすることで,応用範囲も広げることを推進する。 また、すでに施行した鉄球と硬式球(プロ野球公式球)を加撃物とする検討の研究成果を速やかに発表・論文化する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の予定では、昨年度中にカメラ分析による依頼解析まで行う予定であったが、当初予定の「カメラと解析ソフト」購入から「より高度なカメラの使用による撮影+高度の分析・解析依頼」に変更したため、予算不足により「分析・解析のための試験および撮影」は行えたが、「分析・解析」は今年度となり、研究に遅れが生じ、成果発表が行えなかったため、研究期間を延長しかつその分の予算を「次年度使用額」として成果発表のための論文掲載費や英文校正料に使用することとした。
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