研究課題/領域番号 |
17K11776
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
大川 成剛 新潟大学, 医歯学系, 准教授 (80143791)
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研究分担者 |
青柳 裕仁 新潟大学, 医歯学系, 助教 (30460140)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 無機有機融合体 / PEEK / 接着強さ |
研究実績の概要 |
生体親和性に優れるポリエーテルエーテルケトン(PEEK)と炭素およびガラス繊維などとの融合体を次世代型生体材料として創製することを目的としている.エンジニアリングプラスチックのPEEKは,生体親和性に優れることが既に確認されており医療分野で人工骨等の代替として使用されている.ただPEEKの力学的特性の観点からしてPEEKの弾性係数は骨のそれよりも小さく,応力遮蔽が起こりやすい.そこで,PEEKと炭素繊維を融合させて骨の形状に類似した構造体を3Dプリンターで創製することを検討した.PEEKを成形できる3Dプリンターは上市されているが高額なので,廉価版の3DプリンターでPEEKが成形できるようにプリンターヘッドを試作した.PEEKの溶融軟化温度である約400℃まで加熱できるマイクロヒーターと温度制御器を試作プリンターヘッドに組み込んだ.試作プリンターヘッドの加熱温度,射出ノズル径,PEEKの送り速度およびPEEKの冷却速度を検討した.つぎに炭素繊維などとPEEKを融合させるための繊維の送り機構を検討し試作を繰り返した. さらに,生体への応用を考慮すると,PEEKとPEEKおよびPEEKと金属との接着が課題となる.そこでPEEKとチタンの接着強さおよび接触角について検討した.接着性レジンとしてスーパーボンドC&Bを用い,PEEKの表面改質を紫外線(UV)照射(UVの波長は365と172 nm)によっておこなった.172 nm UV表面処理の接着強さは,非表面改質の場合の約1.3倍であった.表面改質により接触角は小さくなり,ぬれ易くなったことが分かった.XPSによる表面分析によると,PEEKに由来するピークのほかに新たなピークが検出された.このピークはUVのエネルギと照射の際に発生するオゾンによりPEEKの化学結合が切断され生成したと推測された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
無機有機融合体を創製するための3Dプリンター用プリンターヘッドの試作にあたり,溶融熱源の選択とその試作が順調に進み予定よりも早く準備ができた.また,溶融最適条件および射出ノズル径の調製も概ね予定どおりに進行した. PEEKの接着に関しては,UVにて表面改質することで接着強さが向上した.ただリン酸エステル系の接着性モノマーを用いた接着よりはカルボン酸系接着モノマーを用いた方が有意に接着強さは大きかった.この相違についてさらに検討するために,接着モノマーを入手し接着機構について検討する準備をおこなった.これらの理由により研究はおおむね順調に進行していると思われる.
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今後の研究の推進方策 |
無機有機融合体の次世代型生体材料の創製にむけて3Dプリンターでの成形と表面改質についてさらに推進し考察検討する.そのために引き続き炭素繊維などとPEEKを融合させるための繊維の送り機構を試作検討し,PEEKと繊維が融合した成形体を試作する.これを基に骨をモデルとした無機有機融合構造の創製を検討する.また試作した融合体の機械的特性の検討および繊維の含有量と応力遮蔽との関係について検討し,次世代型無機有機融合体について考察する. また,繊維とPEEKおよびPEEKとPEEK等の化学的結合を検討するために,新たに大気プラズマ処理によるPEEKの表面改質を検討する.処理後の表面分析および接触角の測定により,PEEKの化学結合機構を解析する.これらの成果を国際学会にて発表討論する予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
学会発表用ポスターの印刷費が見積もりよりも低かったため.発表用ポスターの印刷費として使用する予定である.
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