研究課題/領域番号 |
17K11777
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
青柳 裕仁 新潟大学, 医歯学系, 助教 (30460140)
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研究分担者 |
大川 成剛 新潟大学, 医歯学系, 准教授 (80143791)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 炭化珪素繊維 / シランカップリング処理 / 機械的強度 / コンポジットレジン / アクリルレジン / 繊維強化 |
研究実績の概要 |
高靭性および高耐久性を歯科用高分子材料に付与するため、SiC繊維との複合材を創製した。 初めに、試作SiC繊維強化型コンポジットレジンを作製し、γ-MPTSを用いた適切なシランカップリング処理法を検討した。実験に供するベースレジンとして、主成分がウレタンジメタクリレート(UDMA)、および希釈剤としてトリエチレングリコールジメタリレート(TEGDMA)を用い(UDMA : TEGDMA = 70 mass% : 30 mass%)、光増感剤としてカンファーキノン、重合促進剤としてN,N-ジメチルアミノエチルメタクリレートを添加した光重合型ベースレジンを調製した。SiC繊維へのシランカップリング処理は、メーカー指示に従ったものとシランカップリング処理後に2週間室温で風乾(風乾法)させたものとを比較した。評価にはシランカップリング処理後のSiC繊維表面へのFTIR分析、ISO4049に準拠した試作SiC繊維強化型コンポジットレジンへの3点曲げ試験およびSEMによる破断様相の観察を用いた。本実験より、1 mass%γ-MPTSシランカップリング処理剤を用いた風乾法が最適であることが明らかとなった。 次に、臨床応用を目指し、市販シランカップリング処理剤を用いて試作SiC繊維強化型コンポジットレジンを作製し、同様の評価を行った。本実験より、メーカ指示に従って市販シランカップリング処理剤を用いる方法は上記風乾法に劣らない効果が得られることが判明した。 最後に、市販床用アクリルレジンを用いたSiC繊維-アクリル複合体の作製および評価を行った。本実験では、ISO20795-1に準拠し、シランカップリング処理を行っていないSiC繊維を単方向に並べたシートおよび繻子織SiC繊維シートを埋入した試験片の評価を行い、前者の方が高い曲げ強度を得られることが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究で当初予定していた、γ-MPTSを用いた適切なシランカップリング処理法の検討のみならず、臨床応用を視野に入れたSiC繊維への市販シランカップリング処理剤の効果の検討および市販床用アクリルレジンへSiC繊維シートを用いたSiC繊維-アクリル複合体の作製および評価・検討を行うことができた。 これらの結果は、国内学会および国際学会で発表を済ませており、現在論文投稿を行う準備に入っている。
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今後の研究の推進方策 |
臨床応用を目標に、SiC繊維にオペーク材を用いた色差測定(審美性の検証)およびサーマルサイクル試験による劣化試験等を行う予定である。 オペーク材を用いた色差測定(審美性の検証)はシランカップリング処理後のSiC繊維の表面に市販オペーク材を塗布し、色差測定を行う。色差計測には既存のShadeEye NCCを用いる。上記オペーク処理を行ったSiC繊維に1.0および2.0 mm厚のコンポジットレジン(VITAシェードA1~A3.5)を張り付け、オペークを裏面に塗布もしくはなにも処理していないコンポジットレジンとの色差を比較する。 また、劣化試験はサーマルサイクル試験で、5℃および60℃の蒸留水に交互に1分間ずつ浸漬し、0回をコントロールとし、1,000、5,000、10,000回行ったものを、前年度と同様に3点曲げ試験で評価を行う。得られた結果より、シランカップリング処理の検証を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
現在、研究成果の論文投稿および英文校正費、次年度の国際学会(IADR)での発表のための発表関連費等として使用予定である。
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