研究課題/領域番号 |
17K11778
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
佐々木 淳一 大阪大学, 歯学研究科, 講師 (50530490)
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研究分担者 |
今里 聡 大阪大学, 歯学研究科, 教授 (80243244)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 歯科材料学 / 生体材料学 / 歯周組織再生療法 / 歯科用メンブレン / PLGA |
研究実績の概要 |
平成30年度では、二層性PLGAメンブレンを用いることで細胞挙動の制御が可能であるかを評価することを目的とした検討を行った。本研究で作製した二層性PLGAメンブレンは、密な層(外層)と網目状の疎な層(内層)を有しており、まずは、それぞれの表面にマウス由来線維芽細胞(L-929)、あるいはヒト由来骨髄間葉系幹細胞(hBMSC)を播種し、最大12日間培養後の細胞数を測定した。その結果、いずれの細胞も、試作メンブレンの内層表面において、外層表面と比較して有意に細胞増殖が促進することが分かった。また、L-929を播種した試作メンブレンの走査型電子顕微鏡観察を行ったところ、細胞が内層表面で良好に伸展している様子が観察できた。一方、試作メンブレン外層表面では、球形の細胞が多く観察され、メンブレンの内層と外層の構造の違いは細胞接着に影響を与えることが示された。 次に、二層性PLGAメンブレンの各面における、細胞の骨系分化に対する応答を検討することを目的に、試作メンブレンの各面にhBMSCを播種し、骨芽細胞分化誘導培地を用いて21日間の培養を行った。リアルタイムPCRによる骨系分化の評価を試みたところ、メンブレン上で培養したhBMSCの細胞数が必要量に達しなかったため、mRNA発現量による比較データを得ることはできなかった。一方、von Kossa染色を行うことでメンブレン表面に沈着した石灰化基質を可視化したところ、試作メンブレンの内面において有意に多くの石灰化基質が沈着していることが分かった。これらの結果から、二層性PLGAメンブレンの疎な内層表面は、密な外層表面と比較して、細胞の増殖や骨系分化に有利な環境であることが示唆された。本研究の結果、試作した二層性PLGAメンブレンを応用することで細胞挙動の制御が可能であることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30年度においては、凍結乾燥処理を応用して作製した二層性PLGAメンブレンを用いることで細胞挙動の制御が可能であるかを評価することを目的としていた。研究実績の概要に示した通り、試作した二層性PLGAメンブレンの内層表面において、ヒト由来骨髄間葉系幹細胞の増殖や骨系分化が促進することが明らかとなり、試作メンブレンを応用することで細胞挙動の制御が可能であることを示すことができた。 以上のことから本研究は、おおむね順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
試作層状メンブレンが隔離膜材料としての機能性を具備しているかを評価することを目的として、 in vivoによる検討を行う。ラット頭蓋骨に形成した直径5 mmの骨欠損を、試作メンブレンまたは市販メンブレンで被覆し、一定期間後、組織再生状態の多面的な評価を行う。具体的には、被覆4または8週後に、採取したメンブレンを含む骨欠損周囲組織について、マイクロCTを用いて再生骨量を定量評価する。次に、これらの脱灰試料からパラフィン包埋薄切切片を作製し、ヘマトキシリン・エオジン染色を施して、メンブレンの構造の変化や再生骨の組織学的検討を行う。さらに、幹細胞マーカーの免疫蛍光染色を行い、メンブレン周囲の間葉系幹細胞の分布について評価する。これらの結果を総合的に検討することで、メンブレンの層構造が組織再生に与える影響を明らかにし、試作メンブレンの組織再生用材料としての有効性を評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初、本研究課題に関連する研究機関や企業に出向き、数回の研究打ち合わせを実施する予定であった。しかし、一部の打ち合わせをWeb会議に簡略化したことから、次年度使用額が生じることになった。関係者全員を交えた直接的な研究打ち合わせは、今年度に実施する予定としており、本事項に係る旅費や成果発表(学会発表、論文発表)に係る費用は、平成30年度と同規模の金額を使用することを計画している。
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