歯科領域における歯科用金属の成形加工は、歯科精密鋳造法によって確立されてきた。近年のCAD/CAM技術の発展によって、セラミックスやレジン系材料の加工法が劇的に変化しつつあるが、金属材料は未だその域に到達していない。積層造形技術の発展により金属粉末による三次元造形法が紹介され、産業界では今後の普及が期待されているが、歯科医療への応用においては、金属材料の選別、造形物の物性、寸法精度など検討すべき問題点も多く、それらを改善することが課題とされている。本研究は、新たな歯科医療技術に適合した金属材料による製作・加工技術を構築し歯科臨床応用に向けた検討を模索することを目的としている。2種金属(コバルトクロム合金、チタン合金)について諸物性の評価ならびに歯冠形状を模した造形試験、試作チタン合金の造形条件の最適化を試みた検討においては、チタン合金(Ti-6Al-4V)を用いて鋳造法で製作した試験片の引張強さは約860MPa、積層造形法では約1150MPaであった。表面硬さ(ビッカース法)は、鋳造法で約470Hv、積層造形法では約380Hvであった。鋳造法ではチタンのαケースの影響により表面硬さが大きな値を示したが、積層造形法ではαケースの存在を認めず、表層と内部での硬さ変化に著しい差異は認めなかった。歯冠形状をフルクラウン基準金型をもとに作製したところ、コバルトクロム合金とチタン合金ともに積層造形法でも加工が可能であり最終的に各8個のフルクラウン造形物を作製した。鋳造法で作製した場合、コバルトクロム合金、チタン合金ともに基準金型辺縁部での適合性は既存研究結果同様に約50μm程度のセメントスペースを確保することが可能であった。積層造形法では加工条件を計5通りの組合せで検討し、うち2つの条件設定下において造形試料と基準金型の適合性は約60~80μmの適合精度を可能とした。
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