研究課題/領域番号 |
17K11785
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
小見山 道 日本大学, 松戸歯学部, 教授 (60339223)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 体性感覚 / 睡眠障害 |
研究実績の概要 |
平成29年度は、まず低レベルのクレンチングが単独歯の咬合接触面積に及ぼす影響について検討した。咬合接触関係の記録は、均一に練和した咬合接触検査材(ブルーシリコーン®,ジーシー)を用いて行った。ビジュアルフィードバックにて最小の力、20% 、40%MVCの力で咬頭嵌合位を維持し、記録材を介在させた状態を硬化終了までの1分間保持するよう指示し咬合接触関係を記録採得した。咬合接触関係の解析は、咬合接触部位におけるシリコーンの厚さによる光透過レベルを変化させた検出レベル1~5で行った。大臼歯で咬合接触面積は大きい傾向を示し、臼歯部では約10%MVCである最小限の力による咬合接触面積は20%、40%MVCとクレンチング強度の増加により、咬合接触面積も増大する結果を得た。一方、正常被験者に対する断眠実験を進め、睡眠の障害が顎口腔系の体性感覚に及ぼす影響について検討した。被験者は睡眠障害を認めない健常者とし、3日間連続で参加した。1日目の測定をbaseline(BL)とし,一晩の断眠を行った。2日目の測定を断眠後とし,2日目の夜間は睡眠を取るよう指示した。3日目の測定を回復睡眠後とした。測定項目は静的感覚試験,動的感覚試験,エプワース眠気尺度(ESS)とした。静的感覚試験,動的感覚試験の測定部位は拇指球筋掌側の皮膚,舌尖部とした。静的感覚試験では,拇指球筋掌側の皮膚と舌尖部におけるBLのNumerical Pain Scale(NPS)は回復睡眠後と比較し有意に高い値を示した(P<0.05)。動的感覚試験では,舌尖部におけるBLのNPSは回復睡眠後と比較して有意に高い値を示した(P<0.05)。ESSによる断眠後の睡眠スコアはBLおよび回復睡眠後と比較して有意に高い値を示した(P<0.05)。本研究より,断眠による睡眠障害は舌の体性感覚へ影響を及ぼすことが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの研究で得られた咬合接触面積とクレンチング強度に関する国際論文が発表されている。さらに睡眠の障害が顎口腔系の体性感覚に及ぼす影響について実験が進んでおり、静的感覚試験では,拇指球筋掌側の皮膚と舌尖部におけるbaselineのNumerical Pain Scale(NPS)は回復睡眠後と比較し有意に高い値を示し、動的感覚試験では,舌尖部におけるBLのNPSは回復睡眠後と比較して有意に高い値を示した。エプワース眠気尺度による断眠後の睡眠スコアはbaselineおよび回復睡眠後と比較して有意に高い値を示している。そのデータ解析を行い、日本補綴歯科学会や日本口腔顔面痛学会などで学会発表を行っており、現在、論文としてまとめているところである。さらに睡眠の障害が咬合違和感に及ぼす影響についてもデータの蓄積が進んでおり、研究計画は概ね順調に推移していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年に行った研究とその結果をもとに、新たに実験を追加する。測定部位は拇指球筋上皮膚および舌尖とし,SEMMES-WEINSTEINのフィラメントを用いた触覚の測定および定量型知覚計を用いた痛覚閾値の測定を行う.1日目の測定をbaselineとし,1日目の夜は断眠を指示した.2日目の測定は断眠後,3日目の測定は回復睡眠後とする。各試験の回答はNumerical Pain Scale(NPS)スコアを用いる.また咬合違和感については、咬合フォイルの枚数を増やすことで、咬合認知閾値と違和感感知閾値を計測する。得られた結果は、国内学会、国際学会での発表を重ね、さらに得られた結果をとりまとめ海外学術雑誌への投稿を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、研究計画において、既に保有している実験機器、消耗品等があり、関連する支出が予想された内容より少ない状況で実行可能であった。また学会発表に関わる旅費等についても、結果のまとめに少し時間がかかった結果、これらの次年度使用額を生かして、次年度において活発な学会発表と論文投稿を行っていく予定である。
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