研究課題/領域番号 |
17K11785
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
小見山 道 日本大学, 松戸歯学部, 教授 (60339223)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 睡眠 / 顎口腔系 / 感覚 |
研究実績の概要 |
令和元年度は、正常被験者に対する断眠実験を進め、睡眠の障害が咬合感覚に及ぼす影響について検討した。被験者は顎口腔系に異常を認めない12名の男女とした。全被験者は3日連続の実験に2回参加し,それぞれをSR群とNormal sleep (NS)群とした。SR群では実験1日目の夜にSRを行い,実験2日目の夜にNSを行うように指示した。NS群では両日の夜にNSを行うように指示した。咬合感覚として,歯根膜の触圧覚閾値(TDT),咬合認知閾値(IDT), 咬合不快感閾値(POU)を測定した。TDTとIDT,POUの決定は精神物理学的測定法の上下法にて行った。対象歯は下顎両側第1小臼歯と下顎両側第1大臼歯とした。各日における眠気の程度はエプワース眠気尺度(ESS)を用いて評価し,アクティウォッチにて各日の総睡眠時間を記録した。 SR群における1日目の総睡眠時間は,SR群における2日目の総睡眠時間およびNS 群における1日目の総睡眠時間と比較して,有意に低い値を示した(P < 0.05)。SR群における2日目のESSは,SR群における1日目と3日目のESSおよびNR群における2日目のESSと比較して,有意に高い値を示した(P < 0.05)。各対象歯において,SR群における2日目のPOUは,SR群における1日目と3日目のPOUおよびNR群における2日目のPOUと比較して,有意に低い値を示した(P < 0.05)。TDTとIDTについては,各日間において有意差を認めなかった。 本研究より,睡眠の制限は口腔領域の体性感覚に影響へ及ぼし,睡眠の制限は咬合違和感閾値を減少させることが示唆された。これらの結果は咬合違和感症の病態解明の一助となると考えられるが,今後は咬合違和感症患者の中枢における咬合感覚認知機能の評価が必要と考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの研究で得られた睡眠の障害が顎口腔系の体性感覚に及ぼす影響について実験がさらに進んでいる。睡眠の制限は口腔領域の体性感覚に影響へ及ぼし,フィラメントテストおよび痛覚閾値試験において,拇指球筋上の皮膚では測定時期間に有意差を認めなかったが,舌尖部の粘膜では有意差を認めたことから,手足等の皮膚と比較し,舌の粘膜は睡眠の制限による体性感覚変調の影響を受けやすいことが示唆された.また、睡眠の制限は睡眠の制限は咬合違和感閾値を減少させることが示唆されており、各種の口腔領域の体性感覚に影響へ及ぼすことが解明された。 これらの結果はデータの詳細な解析を行い、日本補綴歯科学会や日本口腔顔面痛学会などで学会発表を行い、インパクトファクターのある国際雑誌に論文として掲載された。さらに睡眠の障害が顎口腔系の感覚に及ぼす影響についてもデータの蓄積が進んでおり、研究計画は概ね順調に推移していると考えられる
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究で得られた睡眠の障害が顎口腔系の体性感覚に及ぼす影響について実験がさらに進んでいる。睡眠の制限は口腔領域の体性感覚に影響へ及ぼし,フィラメントテストおよび痛覚閾値試験において,拇指球筋上の皮膚では測定時期間に有意差を認めなかったが,舌尖部の粘膜では有意差を認めたことから,手足等の皮膚と比較し,舌の粘膜は睡眠の制限による体性感覚変調の影響を受けやすいことが示唆された.また、睡眠の制限は睡眠の制限は咬合違和感閾値を減少させることが示唆されており、各種の口腔領域の体性感覚に影響へ及ぼすことが解明された。 これらの結果を基に、いわゆる睡眠不足の状態が顎口腔系の体性感覚に及ぼす影響について検討していく。すなわち、低レベルの断眠を継続的に行うことで、慢性的な睡眠不足の状態を発生し、そのことが今回のような顎口腔領域の触覚や痛覚、さらには歯根膜を介した咬合感覚に及ぼす影響について検討していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和元年度、3月の国際学会での発表予定であったが、コロナウイルス感染症の蔓延にて学会が中止となり、予約してあった渡航がキャンセルされた。したがって、これらの次年度使用額を生かして、次年度において活発な学会発表と論文投稿を行っていく予定である。
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