研究課題/領域番号 |
17K11794
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
堀内 留美 北海道大学, 大学病院, 助教 (10374274)
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研究分担者 |
横山 敦郎 北海道大学, 歯学研究院, 教授 (20210627)
堀内 正隆 北海道医療大学, 薬学部, 准教授 (90322825)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | オッセオインテグレーション / インプラント周囲炎 / チタン |
研究実績の概要 |
2019年度は,国立研究開発法人物質・材料研究機構によるマイクロアレイデータの再解析結果に基づいて,オッセオインテグレーション獲得群 (OI) および非獲得群 (DI) のそれぞれに優位に発現している遺伝子を分類し直した.それらの中から,翻訳産物が細胞外に分泌されるものをさらに選別し,OIにおいて骨形成関連因子Dmp1を,DIにおいて炎症関連遺伝子Bpfia5を見出した.マイクロアレイで用いたOIおよびDIのtotal RNAを鋳型として,Dmp1およびBpifa5の特異的プライマーを用いたRT-PCRを行うことで,これらの遺伝子の発現を裏付けることができた. Ex vivoにおいて,Dmp1およびBpifa5の分泌型の翻訳産物が,オッセオインテグレーションに影響を及ぼすのかどうかを調べるための準備として,それぞれの組換えタンパク質生産系の構築を試みた.まずラットDmp1およびBpifa5遺伝子をGRP-tag融合タンパク質として生産するための発現ベクターを作製した.発現宿主には,大腸菌,昆虫細胞およびヒト細胞を用いた.Dmp1-GRP融合タンパク質は,大腸菌と昆虫細胞では発現が認められなかったが,ヒトExpi293F細胞では,分泌シグナルとしてSecreconを付加することで良好な発現を示した.一方,Bpifa5-GRP融合タンパク質はいずれの宿主においても発現が認められなかった. 次にGRP-tagを特異的に結合する作用をもつカードランを,インプラント材料であるチタンディスクにコーティングした.このディスクを分泌培地中に浸漬することで,培地の前処理を一切すること無しに,ワンステップで高純度のDmp1-GRP融合タンパク質を表面に結合した,新規な機能性チタンディスクを得ることに成功した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
分担者の堀内正隆が2019年度後半において足首を骨折して歩行困難となり,しばらく実験が中断してしまったため,研究が遅れている,2020年3月時点において,実験を再開したところである.
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今後の研究の推進方策 |
Dmp1-GRPについては,ラット骨肉腫細胞株UMR-106に加えた際の細胞増殖,細胞形態変化および石灰化に及ぼす影響を詳細に調べていく.また,カードランシート上に固定化したDmp1-GRPに対して,UMR-106が選択的に固定化できるかどうかについても検討する.また,Dmp1やSPLUNC2以外のOIおよびDIそれぞれに固有の発現遺伝子について,さらに組換えタンパク質を生産し,UMR-106細胞に対する種々の生物学的な影響を調べ,オッセオインテグレーション獲得に貢献する遺伝子産物を明確にする.
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由: 研究分担者の堀内正隆が足首を負傷して,研究活動が中断したため,本来当該年度内に進める実験が遅れており,次年度に使用額が生じたものである. 次年度使用計画: ヒト培養細胞により生産したOI関連遺伝子産物であるDmp1-GRPを用いて,ラット骨肉腫細胞種UMR-106の増殖および石灰化能についてより詳細に検討を進める.具体的には,UMR-106に対して,用量依存的な細胞増殖数の変化について,WST-1アッセイなどの比色定量法により測定する.これらの実験に必要となる増殖測定試薬や石灰化染色試薬を購入する.また,アクチンあるいは微小管の蛍光染色像を蛍光顕微鏡により観察し,Dmp1-GRP存在下における細胞形態の変化について考察する.この観察に必要となる蛍光顕微鏡観察用のガラス器具を購入する.一方,現時点において生産できていないDI関連遺伝子の翻訳産物Bpifa5について,ヒトExpi293F細胞だけでなく,ExpiCHO細胞によっても生産を試みる.これらの動物細胞による発現実験にあたり,ExpiCHO細胞およびその培地を購入する.その他にも候補としてあげられているOI関連遺伝子やDI関連遺伝子の翻訳産物についても生産を試み,Dmp1-GRPと同様の方法で,得られた組換えタンパク質による細胞増殖や分化への影響を調べていく.
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