本研究の目的は、歯科インプラント治療における確実なオッセオインテグレーションを獲得するために、遺伝子発現情報に基づいた革新的な治療法を開発することである。申請者らは、これまでにインプラント埋入初期の微小動揺によって変動する遺伝子をDNAマイクロアレイを用いた網羅的解析により複数同定している。本研究では、これら変動の大きい遺伝子それぞれの翻訳産物の骨形成への影響を、in vitroおよびin vivoにて検証する。そして、オッセオインテグレーション阻害因子を抑制するRNAアプタマーを作製し投与することによって、インプラント周囲炎の進行により喪失したオッセオインテグレーションを再獲得し、インプラント周囲骨の再生を目指す。 2020年度は、昨年度構築したオッセオインテグレーション促進因子Dmp1タンパク質のExpi293細胞による発現系を利用して、Dmp1タンパク質の分泌生産およびアフィニティークロマトグラフィーによる精製を行なった。得られたDmp1タンパク質を、チタンディスク上に播種したラット骨肉腫細胞UMR-106に添加し、そのチタンディスク上での細胞増殖数の測定および形態変化を観察した。その結果、Dmp1は低濃度の場合には細胞数を増加させ、一方、高濃度の場合には細胞増殖を阻害した。また、Dmp1が低濃度の場合に比べ、高濃度の場合には、細胞の外形が大型化する傾向が観察された。 研究期間を通じ、オッセオインテグレーション促進因子の一つの候補として考えられるDmp1タンパク質が、in vitroにおける検証では、骨形成に関連する可能性が示唆された。
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