研究課題/領域番号 |
17K11803
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
管野 貴浩 島根大学, 学術研究院医学・看護学系, 准教授 (60633360)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 顎骨再生 / 間葉系幹細胞 / 骨再生 / 生体材料 / 口腔顎顔面外科 |
研究実績の概要 |
平成30年度は、前年度の研究をさらに発展展開させ、研究成果としてその一部を学術論文として発表した。 まずIn vitro研究として超選択的高純度な精製手法として連携研究者と協力し、予備実験としてヒト抜去歯より歯髄を採取し、得られた組織をI型コラゲナーゼとディスパーゼ処理し、フィルターを介して細胞懸濁液を得た。これらを遠心沈降してペレットとし、各種モノクローナル抗体処理を行い、フローサイトメトリーを用いて各種表面マーカーから超選択的単離ヒト歯髄由来幹細胞(hDPSCc)の誘導単離および培養をおこなった。hDPSCsの増殖能と多分化能、骨形成能に関しては、研究計画の通りに評価し、LNGFR+/THY-1+の両者に陽性hDPSCsは、コロニー形成、増殖能および分化能に優れることを確認した。 これらのhDPSCsを用いて、平成30年度後半からはIn vivo研究の予備実験として、ラット下顎骨にCritical bone defectを作成し、直径4mm・厚さ2mmのディスク状の多孔質u-HA/PDLLA複合体へのhDPSCs細胞移植を試みた。10週齢雄性SDラットを用いて下顎骨に直径4mmの顎骨欠損を作製し、hMSC移植なし群、移植実験群、欠損のみの3群にて比較検討を行った。すべての実験動物は、術後免疫不全状態とするために連日FK506 (2mg/kg/日)、ABPC (20mg/kg/日) を投与した。移植術後1、3、8週にて安楽死を行い、骨形成・再生について評価検討を行った。検体は非脱灰標本とし、エタノールにて脱水、LR-WHITE樹脂にて包埋し、非脱灰切片を作製しVillanueva Goldner染色にて評価した。結果は、細胞移植群では顎骨再生に有意な傾向は認められたが、hMSC移植なし群と有意差が見られなかった。移植条件と免疫不全状態による影響が大きいものと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画の通りに、本年度の研究予定であったIn vitro系とIn vivo系での両者の研究を並行して進めることができたこと、また研究成果の一部を学術知見として論文発表を行えたことより、おおむね順調に進行しているものと判断した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、研究計画の通りにIn vitro系およびIn vivo系での両者において予備実験を行うことができた。しかしながら、In vitro系において良好な結果を得られた超選択的高純度な歯髄由来幹細胞を、In vivo系においてラット顎骨欠損モデルへの移植を行ったものの、移植を行っていない群と比較し、想定していた有意な顎骨再生・顎骨形成促進効果が得られなかった。とくに多孔質u-HA/PDLLA複合体の顎骨再生足場への幹細胞移植量や細胞移植時期と移植手法、また免疫不全モデルの条件決定に関して検討の余地があるものと考えている。 今後の推進方策としては、連携研究者らと討議を行い、幹細胞移植量を再度検討し、また投与時期について顎骨再生足場材料への播種手法について更なる予備実験を行い、有用な幹細胞移植手法を確立する。一方で、術後免疫不全状態とするために連日FK506 (2mg/kg/日)を行った。これにより大多数の研究動物は著しい成長抑制をきたしており、免疫不全状態の条件を再考の余地があり検討していく。 また、本研究により得られた学術知見は、来年度も継続して研究成果として学会等での情報交換および情報収集とともに発表を行い、学術論文としての発表を行っていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度の物品等の購入は、研究を実施するのに必要最小限の研究消耗品とし、実験動物の購入と検体の評価に多くを充てた。また出張旅費についても、各種学会への情報収集および成果発表に対して効率的な参加を行い、助成金を使用することができた。一方、学術論文発表を複数行える成果がすでに得られたことより、論文出版に要する費用が予定を超えて多く支出を要した。 次年度は、実験動物をさらに多く使用し、In vivoでの顎骨再生に関して評価検討を行うことを予定しており、その管理および研究の実施に、当初の研究計画どおりの支出を要するものと考えられる。また得られた学術知見の、国際学会での発表と国際学術論文での発表を予定している。今年度もより効果的かつ有効な助成金の使用に努め、国内外での成果発表に努めてまいる所存です。
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