口腔外科臨床において、腫瘍や外傷等によって顎骨欠損をきたす患者さんは多く、顎口腔機能と形態の喪失をきたす。広範囲顎骨欠損部には、自家骨移植が確実な再建治療法であり、様々な身体他部位から骨採取がなされる。しかし外科的侵襲性は高く、骨再生医療的手法を応用し、安全効率的な顎骨再生治療開発が求められている。そこで本研究助成により、①超選択的に単離する高純度歯髄由来幹細胞と、②熱可塑性による加工性、高い骨伝導性、生体吸収置換性、機械的強度を有する未焼成ハイドロキシアパタイト(u-HA)とポリ-DL-乳酸(PDLLA)の3次元複合体(多孔質u-HA/PDLLA複合体)とを組み合わせることにより、新規顎骨再生治療法確立に向けた実験的研究を実施した。 前年度までに、超選択的高純度な精製手法として抜去歯歯髄より、各種モノクローナル抗体処理を行い、フローサイトメトリーを用いて超選択的単離ヒト歯髄由来幹細胞(hDPSCc)の誘導単離培養を行った。これら超選択的高純度なhDPSCsを用いて、ラット下顎骨にCritical bone defectを作成し、ディスク状の多孔質u-HA/PDLLA複合体へのhDPSCs移植研究を試みた。術後免疫不全状態[FK506 (2mg/kg/日)]とし、移植術後1、3、8週にて骨形成・再生を評価検討した。しかし結果は、幹細胞移植群では顎骨再生に有意な傾向は認められたが、移植なし群と有意差が見られなかった。とくに移植条件と免疫不全状態による影響が大きいものと考えられ、さらに長期的に多孔質u-HA/PDLLA複合体内の新生骨の経時的委縮性変化が問題となった。今年度は、これらの長期的骨再生過程における生体材料内での骨再生過程を評価し、超選択的高純度間葉系骨髄幹細胞を用いて研究を継続し問題解決を進めた。また本研究助成によって得られた多くの知見を各種学術雑誌に発表し得た。
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