研究課題/領域番号 |
17K11804
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
香川 和子 広島大学, 病院(歯), 歯科診療医 (60432671)
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研究分担者 |
津賀 一弘 広島大学, 医歯薬保健学研究科(歯), 教授 (60217289)
吉子 裕二 広島大学, 医歯薬保健学研究科(歯), 教授 (20263709)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 再生歯学 / 骨軟骨再生 |
研究実績の概要 |
歯科において骨・軟骨疾患の占める割合は大きく,より安全で侵襲の少ない骨・軟骨再生療法,もしくは高い骨伝導能をもつ人工骨材料の開発が求められている. 骨・軟骨の発生の制御には,線維芽細胞増殖因子(FGF)によるFGF受容体(FGFR)を介したシグナル伝達活性が重要な役割を果たす.これまでに我々は,新規の可溶型FGF受容体である可溶型FGFR2-IIIbが骨・軟骨に存在することを見出した.本研究では,この可溶型FGFR2-IIIbの分子機能を精査し,将来の骨・軟骨疾患の新規治療法の開発に向けた分子基盤形成を目指し,骨および軟骨の発生,分化における可溶型FGFR2-IIIbの役割を解明することを目的とした. 我々は,FGF10の上流にLacZを遺伝子導入したトランスジェニックマウスを用い,発生途中のマウスにおけるFGF10の発現部位を精査した.このトランスジェニックマウスの16.5dpc胎仔を用いてX-gal染色を行ったところ,これまでにFGF10の発現が報告されていなかった大腿骨,脛骨の骨端軟骨および下顎頭軟骨などの軟骨細胞において,FGF10の発現が確認された.次にFGF10をマウスで過剰発現させたところ,鼻中隔軟骨は肥大化し,四肢の骨端軟骨や下顎頭軟骨は矮小化した.また,このマウスの骨は劣形成を生じることが認められた. FGF10の主要な受容体であるFGFR2-IIIbの発現を精査したところ,従来の膜型FGFR2-IIIbとは異なった,新規の可溶型FGFR2-IIIbが骨・軟骨組織に存在することを確認した.この可溶型FGFR2-IIIbは,マウスの頭頂骨,下顎頭軟骨,四肢の骨端軟骨では発現が見られたが,鼻中隔軟骨,口蓋骨,中手骨,中足骨では発現は見られなかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
HeLa細胞は内在性のFGFR2-IIIbを発現しないため,FGFR2-IIIbを遺伝子導入したHeLa細胞はFGFR2-IIIb特異的なシグナル伝達機構を解析できるモデル細胞となる(Zhang et al., 2006; Francavilla et al., 2013).そこで,従来の膜型FGFR2-IIIbと,我々の見出した可溶型FGFR2-IIIb,およびその両方を遺伝子導入したHeLa細胞を作製し,FGF10などの特異的リガンドを負荷した場合のシグナル伝達への影響を比較・検討することを計画した. この計画に則り,可溶性FGFR2-IIIbを遺伝子導入し,かつ抗生物質ドキシサイクリンを培地に添加することでFGFR2-IIIb遺伝子の過剰発現を可逆的に調節できるHeLa細胞を作製した.この細胞を作製するのに時間を要した.現在,この細胞を用いて細胞増殖能を精査している.
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今後の研究の推進方策 |
抗生物質ドキシサイクリンを培地に添加することで目的とする遺伝子の過剰発現を可逆的に調節できるTet-Onシステムを応用し,新規に認められた可溶性FGFR2-IIIbを遺伝子導入したHeLa細胞を作製した.この細胞を用いて,FGF10など特異的リガンドを負荷した場合のシグナル伝達への影響を比較・検討を行い,可溶型FGFR2-IIIbの詳細なシグナル伝達機構を検証する.
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次年度使用額が生じた理由 |
研究を進める上で遅れが生じたため,次年度に繰り越すこととする. 昨年度に行う予定であった,新規可溶型FGFR2-IIIbを遺伝子導入したHeLa細胞の特性を精査する研究を,この予算を用いて行っていく予定である,
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