研究課題/領域番号 |
17K11807
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研究機関 | 北海道医療大学 |
研究代表者 |
會田 英紀 北海道医療大学, 歯学部, 教授 (10301011)
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研究分担者 |
河野 舞 千葉県立保健医療大学, 健康科学部, 准教授 (90586926)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 歯学 / 生体材料 / インプラント / 顎顔面補綴装置 / 光機能化 |
研究実績の概要 |
超高齢社会を迎えた今、キュアからケアへの医療のパラダイムシフトが起こっており、腫瘍等による広範囲顎欠損症例においても、形態・機能の回復だけでなくQOLの回復まで求められている。2012年4月に保険収載されたインプラント支持「広範囲顎骨支持型装置」は正にその期待を担っている。しかしながら、このような顎欠損部位では術後の放射線治療などによって局所の骨代謝能が著しく低下していることから、インプラントの短期的ならびに長期的な安定をはかることは極めて困難である。本研究の目的は、光機能化テクノロジーを応用して、広範囲顎欠損部位に強固なオッセオインテグレーションの獲得を目指すことである。 初年度にラット顔面インプラントモデルを確立したため、平成30年度は引き続きラット骨代謝低下モデルの確立を目指した。当初はラット顔面部に放射線を照射することにより局所の骨代謝が低下したモデルを創出する予定であったが、使用予定であった本学共同研究施設内の機器が利用できなくなったため、骨粗しょう症モデル(卵巣摘出ラット)を使用することとした。卵巣摘出4週後に大腿骨に埋入した試作シリンダー型インプラントに対してバイオメカニカル試験(押し込み試験)を行い、埋入2週後の骨-インプラント結合強度を測定した。Shamラットならびに卵巣摘出ラットに埋入された非機能化インプラント(対照群)の最大押し込み荷重は、それぞれ41.7±3.3、33.2±4.6 Nであり、卵巣摘出により骨-インプラントの結合強さは約2割低下していた。一方で、卵巣摘出ラットに埋入するインプラントを光機能化することで骨-インプラントの結合強さは1.5倍に有意に増大していた(p<0.05)。 以上の研究成果より、インプラントを光機能化することで卵巣摘出によって低下した骨代謝能を補償する可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初はラット顔面部に放射線を照射することで局所の骨代謝が低下した広範囲顎欠損モデルを創出する予定であったが、使用予定であった本学共同研究施設内の機器が利用できなくなったため、急遽他の方法を試みることにした。 最初にビスホスホネート(BP)製剤の長期投与がチタンインプラントのオッセオインテグレーション獲得に及ぼす影響を調べることとした。インプラント埋入前に3ヶ月間 BP製剤(リセドロネート0.7mg/kg)を投与することで大腿骨に埋入したチタンインプラントの骨-インプラント結合強度は約1割低下していた。BP製剤の長期投与による影響が期待していたほど明瞭に現れなかったため、次に骨粗しょう症モデル(卵巣摘出ラット)を使用することとした。卵巣摘出ラットモデルでは、卵巣摘出に伴う骨代謝低下により骨-インプラント結合強度が約2割低下することが確認できたため、今後は放射線照射モデルの代わりに卵巣摘出モデルを用いて研究を続けていくことにした。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究成果より、本研究プロジェクトの研究デザインが概ね妥当であることが確認されたため、最終年度は引き続きラット顔面インプラントモデルにおいて卵巣摘出がチタンインプラントのオッセオインテグレーション獲得に及ぼす影響をバイオメカニカル試験(逆トルク試験)に加えて、骨-インプラント界面の微細構造解析ならびに組織計量学的分析も加えて網羅的に検証していく予定である。さらに、インプラントに対する光機能化処理が卵巣摘出によって低下した骨-インプラント結合を補償する効果についても検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
予算執行率は、99.7%に達しており概ね計画通りに研究費を執行できたと考えている。繰越額はわずかであることから次年度の物品購入費として使用する予定である。
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