超高齢社会を迎えた今、キュアからケアへの医療のパラダイムシフトが起こっており、腫瘍等による広範囲顎欠損症例においても、形態・機能の回復だけでなくQOLの回復まで求められている。2012年4月に保険収載されたインプラント支持「広範囲顎骨支持型装置」は正にその期待を担っている。しかしながら、このような顎欠損部位では術後の放射線治療などによって局所の骨代謝能が著しく低下していることから、インプラントの短期的ならびに長期的な安定をはかることは極めて困難である。本研究の目的は、光機能化テクノロジーを応用して、広範囲顎欠損部位に強固なオッセオインテグレーションの獲得を目指すことである。 これまで順調にラット顔面インプラントモデル、ラット骨代謝低下モデルの確立をしてきた。最終年度はこれらの成果をふまえて骨粗しょう症モデル(卵巣摘出ラット)に対して、卵巣摘出4週後に上顎骨前頭突起に埋入した試作スクリュー型インプラントの骨-インプラント結合強度をバイオメカニカル試験(逆トルク試験)により評価した。埋入後3週の逆トルク試験において、Shamラットならびに卵巣摘出ラットに埋入された非機能化インプラント(対照群)の除去トルク値は、それぞれ0.87±0.06、0.50±0.10 N・cmであり、卵巣摘出により骨-インプラントの結合強さは約4割低下していた。一方で、卵巣摘出ラットに埋入するインプラントを光機能化することで骨-インプラントの結合強さは2.3倍に有意に増大していた(p<0.01)。 以上の研究成果より、ラット顔面インプラントモデルにおいてもインプラントを光機能化することで卵巣摘出によって低下した骨代謝能を補償する可能性が示唆された。
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