研究課題/領域番号 |
17K11808
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研究機関 | 東京歯科大学 |
研究代表者 |
矢島 安朝 東京歯科大学, 歯学部, 教授 (10183667)
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研究分担者 |
山口 朗 東京歯科大学, 歯学部, 客員教授 (00142430)
守 源太郎 東京歯科大学, 歯学部, 助教 (30733745)
松永 智 東京歯科大学, 歯学部, 准教授 (70453751)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | メカノバイオロジー / 骨質 / アパタイト結晶配向性 / インプラント周囲顎骨 / 荷重伝達経路 |
研究実績の概要 |
インプラント治療は、咀嚼機能の回復に優れた歯科治療であるが、インプラント周囲顎骨への過重負担などにより、周囲骨の吸収やスクリューの緩みなどの合併症を惹起することがあり、臨床的に重要な問題となっている。これらの問題点を解決するために、国内外でインプラント周囲顎骨の力学的機能の定量的な解析や顎骨の支持能力の予測法などに関する研究が推進されているが、問題点の十分な解決には至っていない。そのため、従来の力学的解析に加えて骨生物学的解析を含めた多角的な解析法によりインプラント周囲顎骨の力学的および生物学的特性を詳細に解析することにより、優れた歯科インプラントシステムを開発することが期待されている。そこで本研究では、咬合力の差異により生じるインプラント周囲骨に関し以下の解析を行い、インプラント周囲骨の動態を統合的に明らかにしていく。 ⅰ:ナノレベルの解析(1)微小領域X線回折法を用いた生体アパタイト結晶配向性解析 (2)生体アパタイト結晶配向とコラーゲンのクロスリンクの定量的評価 ⅱ:ミクロレベルの解析(1)非脱灰切片を用いたインプラント周囲骨のリモデリング解析(2)脱灰切片を用いた骨系細胞の動態解析(3)インプラント周囲のマイクロクラックとリモデリングの関連性を検討 ⅲ:マクロレベルでの解析(1)骨梁三次元ネットワークの構造解析 上記ⅰ~ⅲで得られた解析データをマクロ-ミクロ-ナノスケールの各スケール毎にデータベース化し統合することで、いずれのスケールからも顎骨動態を予測できるマルチスケール解析を確立する。本研究の推進により、歯科インプラントにおけるオッセオインテグレーションのメカニズムの理解がさらに深まり、バイオメカニクスの評価基準を設定する一助となることから、より科学的な根拠に基づいた歯科インプラント学の発展に貢献できると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は、日本人成人遺体より採取した下顎前歯部の有歯顎・無歯顎骨試料を作製し、μCTによる撮像データをもとに骨密度計測、骨形態計測を行い、いくつかの試料に関しては計測を終了している。微小領域エックス線回折装置を用いた配向計測は、下顎前歯周囲顎骨に関しては解析結果の処理を行った。今後はコラーゲン線維の走行の確認のため、第2次高調波(SHG)イメージング(機器は借用)で可視化する予定である。また、ミクロレベルの解析に関しては、非脱灰切片及び脱灰切片を作製しミクロレベルで解析、骨梁構造を解析するためのマクロレベル解析を進めているところである。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、今まで採取・作製した試料及びデータを元にSHGイメージングにてコラーゲン走行とクロスリンクの定量化を行っていく。そして、脱灰・非脱灰切片を作製しリモデリング解析(オステオン、バケットの分析)や骨系細胞の動態解析(骨芽細胞、破骨細胞の観察)を行う予定である。また、今までのヒト試料のデータをもとにインプラントを有する顎骨試料から今までと同様の計測を行い評価を行うと共に、動物実験に移行していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度に行う動物実験にやや遅れが生じており、そのため次年度使用額が生じた。繰り越した額は、動物実験のゲージ使用料で使用する予定である。
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