研究課題/領域番号 |
17K11809
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研究機関 | 岩手医科大学 |
研究代表者 |
武本 真治 岩手医科大学, 歯学部, 教授 (70366178)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | チタン / チタン合金 / スタチン / 徐放 / 表面分析 |
研究実績の概要 |
本研究では歯科インプラント治療での不完全な母床骨の改善する方法として、チタンインプラント体に骨形成能を有するスタチンを固定、徐放する システムを構築することを目的としている。 平成29年度にチタン板表面にアルミナブラストと5M NaOH溶液での表面処理(アルカリ処理)を行い、その表面に固定する ゼラチンの表面科学について詳細な分析を行い、フルバスタチン/ゼラチンの固定に優位な表面について検討行った。平成30年度は平成29年度の研究内容の発表と薬剤徐放特性を検討した。さらに表面構造を新たに設計する目的で積層造形体の製作を行った。 薬剤徐放特性では、サンドブラストを行わず、フルバスタチンがどの程度固定できるかの検討を行った。したがって、試料は ①スタチンのみを単独でチタン表面に固定、②スタチン/ゼラチン複合体を固定、③アルカリ処理後にスタチンを固定、④スタチン/ゼラチン複合体を固定 とした。表面処理の有無にかかわらずフルバスタチンのみを単独で固定した試料では、溶液中へのフルバスタチンの徐放はほとんど確認できなかった。表面分析の結果からも固定量は僅かであると考えられる。一方、スタチン/ゼラチンを固定した試料では溶液中への徐放を確認することができた。その徐放量はアルカリ処理したチタンが多く、その有用性が確認できた。 インプラント体の表面粗造化と種々の形状のインプラントの創製を目的とした積層造形体での表面構造を変える試みを行った。合金作製方法として、レーザー溶融によるものを採用して行った結果、合金化に成功した。しかし、合金表面と内部との組成の差が認められ、別途表面切削若しくは熱処理などによる均質化が必要であると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は昨年度の内容を発表することができ、徐放特性も計測することができた。徐放特性を測定する中でも、装置のバージョンアップに伴い、検出感度の調整が必要になっている。さらなる課題としては、骨および上皮組織と接触した際の生体組織反応を調べる必要があり、in vivo試験の計画を立てる必要性を感じ、別途検討を進めている。 一方で、表面分析等の機器を用いた固定化の評価は順調に行えていることから、今後は徐放前、徐放後の表面分析評価については引き続き継続していく。
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今後の研究の推進方策 |
2019年は徐放量制御として、分解酵素の量との徐放量との関係を調べていく。また、骨との反応、上皮組織との反応をin vivoで検討を進める。現状では、上皮は皮下での炎症反応と骨形成反応、特に試料付近での石灰化についての検討を進める。表面処理の有効性は十分であると考えるが、in vivoでの評価で徐放を制御するためのさらなる工夫のため、構造幾何学的な表面形態を検討して、固定量の至適濃度の検討と徐放量の制御について繰り返しの実験を行うことによりデータの蓄積を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
スタチン徐放など順調に行えたが、測定を行うための費用が抑えられた。また、スタチンの薬剤が輸入であり為替に左右されて今期納入額が予定額より安価であった。次年度は国際学会での発表を予定し、執筆、追加実験などを行う予定であり、予定通り遂行できる。
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