研究課題/領域番号 |
17K11810
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
佐藤 秀一 日本大学, 歯学部, 教授 (50225942)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 骨再生 / 垂直方向 / 骨膜 |
研究実績の概要 |
歯周病や外傷などによって,失われた歯槽骨を垂直方向に再生させることは臨床的に非常に困難である。申請者はこれまでの研究からその原因として,垂直方向では骨再生に必要な血液や幹細胞などの因子が供給されないためであると考えた。そこで,円柱状のプラスチックキャップ(キャップ)をラット頭頂骨に設置し,キャップ内で再生する垂直方向の骨再生について観察してきた。具体的には,垂直方向の骨再生を観察するキャップ天井部の透過性を変化させ,骨膜(垂直方向)からの再生因子を供給させ骨再生の動態を観察した。これまでの研究の結果,キャップ天井部からの骨膜利用が効果的なことが示された。また,遮蔽膜に適切な遮断性と透過性の両方が必要なこと,および,骨補填材を填入することでさらに骨再生が促進されることが解明された。 そこで,昨年度は臨床で広く応用されているチタンメッシュおよびコラーゲン膜を併用し骨膜からの再生因子の供給を検討することによって,垂直方向の骨再生を比較した。実験方法は,これまでと同様,垂直方向の骨再生を検討するための動物モデルを用いて行った。キャップ天井部に完全な穴を空けた(OP)群,穴を空けた天井部をコラーゲン膜で被覆した(CM)群,チタンメッシュ膜で被覆した(TM)の3群に分け,それぞれのキャップ内に骨補填剤を充填した。手術日を0週とし,実験動物用 3Dマイクロ X線 CTを用いて,12週まで撮影し,キャップ内に増生した新生骨様組織を定量分析した。さらに,パラフィン包埋切片とレジン包埋切片を12週後に作製し組織学的観察と分析を行った。マイクロ CT観察の結果,両群で経時的な新生骨様組織形成が認められた。また,現在,組織分析については切片作成後,分析予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年までの研究結果から垂直方向の効果的な骨再生における骨膜利用には,骨再生させる空間に細胞や栄養を供給するための適切な遮断性と透過性の両方を確立させる必要があることが解明された。そこで,さらに骨膜の効果的な応用法を検討するために適当な遮断性と透過性がある遮蔽膜として,チタンメッシュ膜およびコラーゲン膜を用い実験を継続した。具体的には,これまで用いてきたラットモデルのキャップ天井部に遮断性と透過性の異なるチタンメッシュ膜ならびにコラーゲン膜をそれぞれ設置した後,既存骨膜で被覆しキャップ内の骨再生の動態を検討した。現在,実験が終了し,キャップ内の骨再生量や骨質(骨成熟度)についデータを詳細に検討中である。 一方,人工骨膜の開発については,ラットからの骨膜を分離や培養条件の設定が困難であり,予想していたような効果が得られていない。しかし,現在,研究を進めている既存骨膜の応用が垂直方向の骨再生に期待できると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究成果によって,垂直方向に効果的に骨再生させるためには垂直方向から骨膜を応用することが非常に有効な方法であることがわかった。そこで,骨再生させる空間に細胞や栄養を供給するための適切な条件として,遮断性と透過性の両方を確立させる必要があることがわかった。そこで,遮断性と透過性が適度に両立する遮蔽膜としてチタンメッシュ膜とコラーゲン膜を用いて継続実験を行った。その結果について,キャップ内の骨再生量や骨質(骨成熟度)を現在,分析中である。 一方,これまでの研究結果から人工骨膜については,ラットからの骨膜を分離や培養条件の設定が難しく,キャップ内の垂直方向の骨再生が事前に予測したよりも期待できないことわかってきた。しかし,計画書記載の既存骨膜を用いた方法が垂直方向の骨再生に効果的であることが解明されつつある。したがって,本年度は前述した既存骨膜を応用した方法を中心に研究を進める予定である。 これまでの研究の成果は今春開催の日本歯周病学会(Web開催予定)ならびに今秋開催予定のアメリカ歯周病学会(ハワイ)でそれぞれ発表する。さらに,論文投稿の準備も進めている。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画通り経費を使用したところ,端数が生じた。したがって,今年度は次年度使用額と令和2年度助成金を併せ計画どおりに経費を使用する予定である。具体的な今後の使用計画として,研究試薬の購入などの消耗品費,成果報告のための学会参加費,ポスター作製費,さらに,論文投稿のための英文翻訳・校閲料または投稿料などを計画書記載に従い,変更なく予算を使用する予定である。
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