研究実績の概要 |
本研究は初めてIn vitroにおいてアルツハイマー病の病態モデルを構築し、酸化ストレス耐性歯髄幹細胞の開発に成功した。この病態モデルと酸化ストレス耐性歯髄幹細胞を用いて、神経再生、抗酸化、Aβクリアランス促進、抗老化を総合的に行う治療法を開発し、世界に先駆けて認知症を始めとする神経変性疾患の根本的な治療法を開発することにつながると考えられる。本研究の主な実績は次の通りである。 ①ヒト歯髄幹細胞は機能的な神経細胞に分化し、共培養の成体マウス脳組織を保護する作用があることを証明した。(Xiao et al., Int J Mol Sci. 2017;18 pii: E1745.) ②初めて酸化ストレス耐性ヒト乳歯歯性幹細胞(OST-SHED)(Xiao et al., Int J Mol Sci. 2019;20 pii: E1858.)の開発に成功した。OST-SHEDはアルツハイマー病のAβの毒性に対して抑制作用がある神経栄養因子のBDNFを分泌し、成体マウス脳組織に対して神経保護、内在性の神経再生刺激作用、Aβのクリアランスを促進する作用と神経分化能があることが明らかになった。また、OST-SHEDにおけるそれらの作用は通常のヒト歯性幹細胞より有意に優れていたことを証明した(Xiao et al., Int J Mol Sci. 2017;18 pii: E1745.) ③世界初でIn vitroにおける成体マウスの脳組織の長期間培養法を開発し、酸化ストレスによる成体マウス脳組織のAβクリアランスの低下を再現したアルツハイマー病の三次元病態モデルの作製に成功した。OST-SHEDはアルツハイマー病三次元病態モデルにおけるAβの蓄積を軽減し、Aβ分解酵素であるNeprilysinの活性を増強することを証明した。
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