RANKL(Receptor activator of NF-κB ligand)分子を標的する完全ヒト型モノクローナル抗体は破骨細胞への分化を抑制することによる、強力な骨吸収抑制作用を有しているが、その副作用として引き起こされる顎骨壊死(Medication related osteonecrosis of the jaw; MRONJ)における休薬の有効性について、動物実験を行い検討した。 マウスに対して抗マウスRANKLモノクローナル抗体の投与を行い、MRONJ症状の重症度の評価を行なったところ、休薬期間が長いほど顎骨の露出頻度や顎骨壊死を起こしている骨組織の範囲は、軽症化することが判明した。しかし、抗マウスRANKLモノクローナル抗体の休薬は、MRONJの発症を完全に抑制することはなかった。 さらに、抗マウスRANKLモノクローナル抗体の投与を行ったマウスでは、不可逆的に胸腺が萎縮しており、特に胸腺髄質上皮細胞におけるautoimmune regulator (AIRE)陽性細胞数が減少していることが観察された。血中の免疫担当細胞を検索したところ、CD4陽性およびCD8陽性の発現異常と制御性T細胞の減少がみられた。この胸腺の機能不全に起因する免疫応答の不均衡は、抗マウスRANKLモノクローナル抗体の休薬によって緩和されていたが、復元することはなかった。 以上の結果から、MRONJの発症は、AIREにおける機能不全によるT細胞の自己寛容の破綻によって引き起こされ、MRONJの発症は休薬によってある緩和される可能性は高いが、完全に防止することは出来ないことが示唆された。
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