ビスフォスフォネート関連性顎骨壊死(BRONJ)の発症について、マウスを用いて実験を行なった。昨年度まで実験結果から、BRONJの発症には、M2マクロファージの発現減少に起因するIL-17およびIFN-γ産生細胞数の増加が深く関わっている可能性が高いことが示唆された。一方、BRONJの発症には、第3世代BP製剤であるゾレドロン酸水和物(Zoledronic Acid Hydrate:ZOL)の投与と共に、抗悪性腫瘍薬であるメルファラン(Melphalan:MEL)の投与が必要であった。つまり、ZOL単独投与群あるいはMEL単独投与群では、BRONJ様症状は認められないことにより、BRONJ発症には、MELによる薬理作用が付加要因として強く関与している可能性が示唆された。そこで、BRONJ発症におけるMELの修飾作用について検証を行った。 MELを投与したマウスでは、末梢血中のCD3陽性細胞数が有意に減少していることが判明した。CD3陽性細胞数の減少はMELによる骨髄抑制作用によるものと推測された。しかし、ZOLの投与によって、減少していたCD3陽性細胞全体におけるγδT細胞の割合が有意に増加していることが判明した。この事象は、ZOLが減少していているCD3陽性細胞に対してγδT細胞の増殖と活性化を促すためと考えられた。さらに、γδT細胞の増殖と活性化は、M2マクロファージの作用にも影響を及ぼしていた。以上の結果から、BRONJの発症には、MELによる骨髄抑制が発端となる免疫応答の不均衡が関与しているものと考えられた。
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