研究課題/領域番号 |
17K11823
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
佐藤 千晴 北海道大学, 大学病院, 講師 (50222013)
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研究分担者 |
菊地 奈湖 (間石奈湖) 北海道大学, 歯学研究院, 特任助教 (00632423)
大賀 則孝 北海道大学, 歯学研究院, 助教 (40548202)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ケモカインレセプター / 口腔がん / CXCR7 / 血管 |
研究実績の概要 |
口腔内は様々な炎症刺激に曝されることが多いことが知られている。実際,様々なケモカイン、炎症関連サイトカインの産生も亢進している。近年われわれは癌の血管においても炎症関連マーカーの発現が正常組織内の血管に比べて高いこと,その中でもPTX, PGE2、IL6などのサイトカインに加えて近年注目を集めているケモカインレセプターCXCR7が腫瘍血管内皮細胞の血管新生能維持に重要であることを見出した。 そこで本研究においては口腔がんの腫瘍血管におけるCXCR7の発現と予後との比較を解析し,治療方針決定のためのバイオマーカーとしての有用性を探ることを目的とした。CXCR7はケモカインレセプターであるが,CXCL12の受容体として認識されてまだ日が浅いため、がんにおける機能に関しては未だ不明な点が多い。がんにおける炎症病態をとらえるためのバイオマーカーはいくつか報告されているが,血管に着目したものはほぼ皆無である。口腔がんの血管におけるCXCR7の発現に関してはこれまで全く報告されていない。 当科ではほぼ定期的に口腔がんの手術が行われており、容易に入手できる口腔がん組織検体を用いて、CXCR7のがん細胞ならびに血管以外や間質細胞におけるCXCR7の発現の解析をした。腫瘍血管のCXCR7発現と各がん間質細胞との局在やその動員の程度などを組織学的に解析した。さらに各症例の臨床的因子とCXCR7発現の関連を統計学的に比較検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで、北海道大学病院口腔外科において口腔扁平上皮がんと診断された患者の病理パラフィン切片を用いてヒトのがん組織およびその周囲の非がん部の血管における発現を組織免疫染色により解析する.血管内皮細胞は抗CD34抗体を用いて識別し,さらにCXCR7に対する抗体を用いてシリアル切片を用いて血管との共局在の有無を解析してきた。なお,腫瘍血管におけるCXCR7の発現量の定量評価について法についても確立した。CD34 により染色される血管の数が最も多い領域(hot spot)を5視野選びその視野における全血管数に対するCXCR7陽性血管数の割合により値を出すという手法が最適であるという結論に至った。CXCR7のがん細胞ならびに血管以外の間質細胞におけるCXCR7の発現の解析をおこなうにあたり、CXCR7の発現する血管以外の細胞を同定するために,がん細胞をAE1/AE3, がん関連線維芽細胞をαSMA, vimentin, さらにマクロファージとの関連をCD68に対する抗体を用いた免疫染色を行い,腫瘍血管のCXCR7発現と各がん間質細胞との局在やその動員の程度など組織学的に解析した。血管新生が豊富に起きている部位において炎症性細胞浸潤の増加と血管におけるCXCR7の発現増加が認められた。さらに、血管におけるCXCR7の発現のレベルと口腔がんの予後には負の相関があることが示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
今後は症例数をさらに増やして腫瘍血管におけるCXCR7の発現レベルとがんの転移や抗がん剤治療感受性、さらに腫瘍免疫細胞の動員の程度などについても検討を加えたい。なお、われわれはすでにCXCR7が腫瘍血管内皮においてその遊走能や管腔形成能をに関与していることをsiRNAならびに米国Chemocentrix社との共同研究により示している。今後は彼らが開発したさらにCXCR7の阻害剤CCX771を用いて抗腫瘍効果についても検証する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
各種抗体や試薬の使用が予定より少量で済んだため、請求額が低額になった。 翌年度の培養用試薬・阻害剤やマウスの購入を増やすことができると考える。
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