研究課題
薬剤関連顎骨壊死(MRONJ)は2003年にビスフォスフォネート製剤投与患者における顎骨壊死が報告されて以来、抗RANKL抗体や血管新生阻害薬に関連する顎骨壊死も報告されており、発症すると難治性であることから臨床上大きな問題となっている。現在までの基礎的・臨床的研究の結果、病因の1つとして正常骨でみられる骨リモデリング阻害の可能性が示唆されている。申請者らはこれまで生体内微量元素の1つである亜鉛の骨芽細胞分化に対する効果に着目し骨再生の研究を行ってきた。本研究ではこれまで申請者らが報告してきた骨再生の技術を用いる事により、新規かつ根本的なMRONJの治療法を構築することを目的とした。in vitro MRONJモデルは骨芽細胞様細胞に1-100μMのゾレドロン酸(Zol)を添加するとともにガラスシャーレおよび鉛玉を用いて4g/cm2の圧縮ストレスを負荷して培養を行った。10、100μM Zol添加群は培養3日目より有意な細胞生存率の低下を認めた。一方で、1μM Zol添加群ではZolの添加および圧縮ストレスの有無による細胞生存率の著明な変化は認めなかった。また、骨芽細胞様細胞において分化マーカーをリアルタイムPCRで検索した所、1μM Zol添加および圧縮負荷により各分化マーカーのmRNA発現が減弱することが確認された。さらに培養21日目にアリザリンレッド染色による基質石灰化の評価を行った所、Zol添加および圧縮負荷が基質石灰化を減弱させる事が確認された。上記の通り作製したin vitro MRONJと歯髄幹細胞との共培養の結果、低濃度(1μM)のZol添加群では骨芽細胞分化マーカーのmRNA発現が上昇する事が確認された。以上の結果からZolおよび圧縮負荷により抑制された骨芽細胞分化が歯髄幹細胞により回復される事が示され、MRONJ治療への応用の可能性が示唆された。
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