研究課題
口蓋裂は、ヒトにおける先天異常の中で最も頻度の高い疾患の一つであり、この高い発症率は「口蓋形成が体の中で、分子レベル、環境レベルでの変異に最も敏感な構造体」であることを示している。一次線毛は、体のほとんどの細胞に存在する細胞小器官の一つである。今まで進化の過程で機能を失った細胞小器官と考えられてきたが、近年の分子生物学の発展により、様々な機能を有することが明らかとなってきた。事実、この一次線毛の機能不全は、繊毛病という疾患を引き起こし、この繊毛病患者には、口蓋裂が認められることがある。Oral facial digital typeI (OFD1)syndromeは、口腔、顔面、手指に先天異常を呈する疾患で、この症候群の患者にも、口蓋裂が認められる。近年、その原因遺伝子としてOFD1 が発見され、そのOfd1は一次線毛を構成するタンパクの一つであることが明らかとなった。本研究は、このOfd1の欠損マウスを用いて、口蓋形成メカニズムの解明を目指す。Ofd1の神経堤由来細胞特異的欠損マウスで口蓋裂を認めた。この口蓋裂がOfd1特異的機能の欠損によるものかを検索するために、同じ一次線毛局在分子であるIft88の神経堤由来細胞特異的欠損マウスを確認したところ、Ofd1欠損マウスと同じような口蓋裂を認めた。両欠損マウスの口蓋突起予定領域には、異所性の骨形成が認められたものの、この異所性の骨形成は口蓋裂の原因とではないことが確認された。
すべて 2019
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Arch Oral Biol
巻: 101 ページ: 43-50
10.1016/j.archoralbio.2019.02.017.