研究課題/領域番号 |
17K11834
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
山西 整 大阪大学, 歯学研究科, 招へい教員 (20397780)
|
研究分担者 |
青海 哲也 北海道大学, 大学病院, 医員 (40713194)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 嚥下 / 嚥下中枢 |
研究実績の概要 |
昨年度は脳幹の神経ネットワークが広範囲で維持されている若年ラットin situ標本を用いて、5-HT受容体およびNK1受容体の嚥下活動に対する作用を明らかにするべく一連の実験を行い、上記2種類の受容体カップリングによる2相性制御メカニズムが嚥下中枢のスイッチングに関連することを示唆した。今年度は昨年度の推進方策の計画通り、嚥下中枢を温存した脳幹スライス標本の作製を行った。これは、嚥下中枢を含む最小ネットワークにおける上記受容体の作用を検討することによって、昨年度の実験で得られた2相性制御メカニズムをより深く理解するためである。 生後2日目のSDラットを使用した時、スライスは800 micrometerの厚さになり、中に迷走神経、舌下神経、舌下神経運動核、呼吸中枢であるpre-Botzinger complex、および嚥下中枢を含む延髄背側の孤束核がのネットワークが機能的に含まれている。この延髄スライス標本をカリウム濃度を8mMに調整した脳灌流液で還流すると、舌下神経より自発性で周期性の呼吸活動を記録することができた。その上で、迷走神経に対して電気刺激を行うと、呼吸活動とは明らかに異なった活動パターンを示す神経活動が再現性を持って誘発された。この神経活動は、その誘発によって呼吸周期が延長し、また孤束核周辺へのGABAA受容体拮抗薬の微量注入によっても同様の特徴を持つ嚥下様活動が誘発された。孤束核へのGABAA受容体拮抗薬の微量注入が嚥下活動を誘発することは知られていることから、今回の延髄スライス標本で誘発された舌下神経活動も嚥下様活動であると考えられた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の研究によって得られた上記の結果は、昨年度の研究計画に沿った結果であった。嚥下中枢を温存した延髄スライス標本の作製にはもう少し時間がかかる可能性もあったが、最小スライス標本にするための方策が順調にすすんだことから、上記の結果を得ることができた。研究計画は現在のところおおむね順調に進展している。
|
今後の研究の推進方策 |
今後、最終年度は作成した延髄スライス標本を用いて、5-HT受容体とNK1受容体が嚥下様活動の形成に及ぼす影響を確認する。実験手法は初年度にin situ標本に対して行った方法と同様の手法を用いる。すなわち、それぞれの受容体の促進薬または拮抗薬の全標本または局所微量投与を行う。 延髄標本は嚥下活動の形成に必要な最小のネットワークコンポーネントで成り立つ標本であるのに対して、in situ標本はその周囲の修飾回路も大きく含む標本である。このような異なった中枢神経標本から誘発した嚥下活動に対する薬剤反応の違いを見ることによって、嚥下中枢の神経ネットワークを明らかにすることができると考えている。
|
次年度使用額が生じた理由 |
今年度は、実験計画がスムースに進行したため、計画した結果を得るための実験動物、薬品、備品の使用が予定より少なかった。この予算は次年度の論文作成、投稿に用いる予定である。
|