口腔癌細胞株(HSC-2,HSC-3,SAS)においてSema4DおよびPlexin-B1発現を認めた.口腔癌細胞のSema4D発現制御機構を明らかにするため,IGF-IがHSC-2,SASのSema4D発現を上昇させるか検討した.IGF-Iを添加すると,いずれの細胞株においてものSema4D発現が上昇した.IGF-IR選択的阻害剤, ERK阻害剤,Akt阻害剤を用いて,IGF-IR下流のシグナル伝達因子を阻害した.IGF-IR下流を阻害するとSema4D発現が抑制された.Sema4D発現はIGF-IR下流のERKおよびAKTシグナルで制御されていることが明らかになった.TGF-βはSema4D発現に関与していなかった. 口腔癌切除後の臨床検体を用いて骨浸潤部の病理組織学的検討を行った.骨浸潤部におけるSema4DおよびPlexinB1,IGF-I,IGF-IR発現を免疫組織化学的に評価した.骨浸潤がある口腔癌は,骨浸潤がない口腔癌と比較してSema4D発現が高かった.さらに骨浸潤部におけるSema4D発現は,IGF-I発現と強い相関を認めた. 口腔癌骨浸潤動物モデルにおいて,口腔癌細胞HSC-2のSema4D およびPlexinB1 発現をshRNAで抑制し,骨浸潤の抑制効果を調べた.口腔癌細胞のSema4D 発現を抑制すると,腫瘍増殖および骨浸潤が抑制された.口腔癌細胞のPlexinB1 発現を抑制しても,骨浸潤の抑制効果は限定的であった.骨浸潤部におけるSema4D,PlexinB1,IGF-I,IGF-IR,Ki-67,CD31発現を免疫組織化学的に評価した.Sema4D発現を抑制すると,腫瘍増殖と血管新生も抑制されていた.TRAP 染色を行い,骨吸収面あたりの破骨細胞数を計測した.Sema4D 発現を阻害すると,破骨細胞数が減少していた.
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