研究課題/領域番号 |
17K11839
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
西 裕美 広島大学, 病院(歯), 助教 (70403558)
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研究分担者 |
武知 正晃 広島大学, 医歯薬保健学研究科(歯), 准教授 (00304535)
太田 耕司 広島大学, 病院(歯), 助教 (20335681)
田邊 和照 広島大学, 医歯薬保健学研究科(医), 准教授 (40379847)
久恒 順三 広島大学, 医歯薬保健学研究科(歯), 助教 (40513180)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 口腔粘膜炎症性疾患 |
研究実績の概要 |
胃粘膜の炎症に関与するHelicobacter pylori (H. pylori)などの病原菌が口腔内常在菌の変化に影響しているかを解明することを最終目標と考えている。 そのため平成29年度は、口腔粘膜におけるH.pyloriの感染免疫応答機構の解明を目的として研究を行った。 まず初めに、当院消化器外科における胃癌患者の口腔環境の評価を行った。すなわち、歯周病の臨床評価項目であるポケットの深さやプロービング時の出血の有無、歯周病などによる欠損歯数を評価した結果、健常者に比較して,胃癌患者の歯周病罹患率が高いことを発見した。 さらに、回収した血液より血清中のH. pyloriに対する抗体価を測定したところ、胃癌患者の中でも歯周病罹患患者にはH. pyloriの感染率が高いことを発見した。 H. pylori は胃粘膜に生息するグラム陰性らせん桿菌であるが、胃粘膜に炎症を惹起し、胃潰瘍や胃癌の発症に関係していることが知られている。H. pyloriは胃粘膜だけでなく、歯垢、唾液からも検出されている。 そこで、H. pylori菌のLPSを口腔粘膜上皮細胞に添加し、H. pylori菌と大腸菌LPSにより口腔粘膜細胞で誘導される炎症応答遺伝子の発現を解析した。その結果、H. pylori菌はCXCL10やVCAM-1などの炎症応答性遺伝子発現を誘導することが分かり、CCL20やCXCL10の炎症性応答遺伝子を発現誘導する大腸菌のLPSとは異なった遺伝子を誘導することを発見した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
口腔粘膜におけるH.pyloriの感染免疫応答機構を解明する手段として、口腔粘膜上皮細胞をH. pylori LPSで刺激すると、大腸菌 LPS刺激とは異なる炎症性関連遺伝子が誘導されることを発見した。さらに、胃癌患者の中でも歯周病罹患者はH. pyloriの感染率が高いこと、またH. pylori を有する患者は歯周原菌抗体価陽性率が有意に高いことを発見した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究結果より、H. pyloriを有する患者は胃粘膜だけでなく、口腔常在菌叢が変化している可能性を考えている。一方、歯周病原菌と非アルコール脂肪肝との関与など口腔内細菌と全身疾患増悪の可能性を示す報告から、歯周病菌などの口腔常在菌がH. pyloriを有する胃粘膜疾患を増悪させている可能性も考えている。 これらの仮説を実証するために来年度は、口腔と胃粘膜の細菌叢を検討する予定である。そのために、健常者、H. pylori感染胃癌患者、H. pylori非感染胃癌患者の唾液、胃粘膜組織から16sRNA次世代シークエンスにより口腔内・胃粘膜細菌叢を解析、細菌叢の変化から増加,欠如する細菌を同定する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度は、サンプルの回収や口腔環境の解析などが主研究であり、試薬等の費用が不要であったが、次年度主に行う口腔内・胃粘膜細菌叢の解析や遺伝子解析で助成金を必要とする。
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