研究実績の概要 |
口腔カンジダ症はCandida albicans (以下Ca)を主な原因菌とする日和見感染症である。Caの侵入に対して口腔粘膜細胞はCaを認識し,そのストレスから防御する応答を稼働すると考えているが,口腔粘膜細胞におけるCa の認識機構や免疫防御応答に関しては不明である。近年,不死化口腔粘膜上皮細胞にCa加熱死菌を添加し,発現が誘導される特異的遺伝子をマイクロアレイ法で網羅的に解析し,Caで誘導されるストレス応答蛋白Heme oxygenase-1 (HO-1)を同定した。さらに口腔粘膜上皮細胞がCaの細胞壁成分β-glucanによって、細胞内酸化ストレスROSが増加し,HO-1を誘導することを明らかにしている。今回の研究の目的は、口腔粘膜細胞がCa β-glucan, Ca 生菌を認識する受容体と,Ca で誘導されるHO-1の機能を解析し,Candida 症を含む口腔粘膜疾患におけるHO-1の役割を検討する。本年度の研究でCa生菌、加熱死菌、Caβ-glucanを口腔粘膜上皮細胞に添加した際に,炎症性サイトカインの中で好中球遊走因子であるIL-8 が著しく誘導されること、HO-1をノックダウンした際に,Ca生菌、加熱死菌,β-glucanで誘導されるIL-8が過剰に誘導されることを明らかにした。さらにHO-1のノックダウンはCa生菌,加熱死菌で誘導されるNF-kBの転写活性がさらに増加することを明らかにした。Dectin1, TLR2などβ-glucan に関与する受容体を口腔粘膜上皮細胞が発現していることを確認したが、Dectin1, TLR2のノックダウン株ではCa生菌、加熱死菌,β-glucanで誘導されるHO-1 の発現誘導は親株と比較して変化が認められなかった。現在、他の受容体のノックダウン株を作製し、Caで誘導されるIL-8,HO-1発現の誘導を検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究で、Ca生菌、加熱死菌、Caβ-glucanを口腔粘膜上皮細胞に添加した際に,炎症性サイトカインの中で好中球遊走因子であるIL-8 が著しく誘導されること、HO-1をノックダウンした際に,Ca生菌、加熱死菌,β-glucanで誘導されるIL-8が過剰に誘導されることを明らかにした。さらにHO-1のノックダウンはCa生菌,加熱死菌で誘導されるNF-kBの転写活性がさらに増加することを明らかにした。Dectin1, TLR2などβ-glucan に関与する受容体を口腔粘膜上皮細胞が発現していることを確認したが、Dectin1, TLR2のノックダウン株ではCa生菌、加熱死菌,b-glucanで誘導されるHO-1 の発現誘導は親株と比較して変化が認められなかった。
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今後の研究の推進方策 |
口腔粘膜上皮細胞におけるCa β-glucan, Ca 生菌認識受容体を同定するためにDectin-1, TLR2, TLR4などの受容体の SiRNAを作製し,受容体の制御によるβ-glucan で誘導されるHO-1の発現やCa 生菌で誘導されるIL-8, 細胞障害の影響をWestern blotting法, ELISA法, LDH 法にて検討する。上記の受容体阻害による遺伝子の変化が認められなかった際には,Ca β-glucan 抗体,Ca 生菌抗体を用いてCa β-glucan, Ca 生菌を結合させた磁気ビーズを作製し, RT7全蛋白抽出画分からプルダウンした蛋白をSDS-PAGE 電気泳動,ゲル染色からTOF MAS 解析を行い,Ca β-glucan, Ca 生菌結合蛋白の解析を行う。同定した蛋白の中和抗体や特異的 siRNAを用いて,蛋白発現制御によるβ-glucan で誘導されるHO-1の発現やCa 生菌で誘導されるIL-8、細胞障害の影響をWestern blotting法, ELISA法,LDH 法にて検討する。 Ca で誘導される炎症応答経路を解析するため,炎症関連遺伝子PCR array によってCa 生菌で誘導される炎症関連遺伝子の網羅的解析を行う。その遺伝子群からパスウエイ解析を行い,Ca 生菌で誘導される炎症応答経路を同定し,NF-kB 経路を含むそれらの経路の転写阻害剤を用いてCa 生菌で誘導される炎症応答の影響をReal-time PCR, ELISA法にて検討する。それら経路の転写蛋白活性に対するCa生菌の影響をWestern blotting法で検討し,Ca生菌の炎症応答におけるキー蛋白を同定する。
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